さて、この業務報告、対岸の火事というわけではなく、日本企業でも似たような制度に苦しんでいるビジネスパーソンは少なくありません。なぜこんなことが起きているのでしょう。

 この制度、もともとは従業員を管理するために普通に必要なツールだったのですが、複雑化した事情は経営者の善意から始まっています。こんなエピソードを紹介します。

 私が以前勤めていたコンサルティングファームに、周囲からもめちゃくちゃ仕事ができると評価されていたフランス人のスーパーコンサルタントがいました。その彼に、なんでそんなに仕事ができるのかみんなの前で講義してもらうことになりました。

 会議室に集まったコンサルタントたちが感銘したことは「毎日、寝る前に自分が今日顧客に対してどんな付加価値をつけたのかをじっくり考える」という彼の習慣でした。漫然と忙しく日々を過ごすだけではなく、毎日、じっくりと自分の仕事ぶりを振り返ったうえで明日の計画をたてて眠るということです。

 それでファームの中では同じ習慣が流行しました。これをやると確かに、仕事について深く考える習慣が生まれます。ただ、自発的にそれを取り入れるのであれば自己成長のためのよい習慣ですが、流行し始めると部下のコンサルタントにもそれを要求する上司が生まれはじめます。

 上司は善意として部下を成長させようと振り返りを要求するのですが、これが部下にとってはそれなりの負担になります。今日何をやったかを書くのは単純な作業ですが、それがどう顧客の付加価値になったかを書くのには思考が必要になるからです。こうしたことが起きることで、ただの作業だったはずの業務報告に時間がかかるようになります。

 事態が複雑になった原因を考えてみましょう。この習慣はもともとは飛びぬけて優秀なコンサルタントがやっていた習慣でした。こういう自己啓発的な習慣は簡単に見えて、それを真似するのは難しいものです。

 毎日こつこつとそれができること自体が才能なのです。そういった作業を会社が業務として全員に要求するようになったら、大半の社員はそれに時間がかかって仕方がないか、やりきれずに疲弊するのです。

 残念ながら近年ではどこの会社でも多かれ少なかれ、業務報告のフォーマットは単なる作業で書けるものから進化して、従業員に何かを考えさせて報告させるツールへと発展しています。それを記入するためには時間かかり、そのために本来業務に費やすべき時間がとられるという現象が起きてしまっているのです。

 では、それを一般の従業員はどうやって克服すればいいのでしょうか。すごく簡単な解決策があるので、読者の皆さんもぜひやってみてください。紹介しましょう。