歯科業界が注目した
鍼を使った麻酔方法
仲野 西洋医学的に見たら神経走行が全然違う場所なんですけど…。
若林 刺鍼(ししん)をしているのは第一背側骨間筋と前脛骨(けいこつ)筋のとこですからね。そこを刺激して、なんで内臓付近の痛みがとれるんだよ、と思いますよね。
筑波大学医学部がずっと研究をしていました。鍼を刺して、電気でパルス信号を流すそうです。
仲野 刺すだけではないんですか。
若林 最初は手だけでやってたみたいです。回旋術と言うんですけど、鍼をすごい速度で回転させ続けるんです。要は刺激を与え続ける。それを電気のパルス信号に置き換えたわけですね。そうしたら、麻酔をまったく使わなくても虫垂炎の手術くらいだったらできるようになりました。
虫垂炎だけでなく、歯科領域にも応用されて、抜歯時の麻酔にもしばらく使われていました。日本大学の歯学部で熱心に研究していたそうで、一時期は日大の歯科医師は鍼灸も教わってたんですよ。
仲野 大々的に取り入れようという時代があったわけですね。
若林 そうそう。歯科の麻酔で使うのはたしかに便利だと思います。筋反射をなくさなくても、痛みだけとれれば抜歯はできるので。
ただし歯科医師は歯科以外の治療を行なってはいけないですから、鍼灸も法律上難しかったようで、結局やらなくなったのですが。研究書も何冊も出てて、合谷と手三里(図9)に電気信号を通すと、歯の痛みを取ってくれると言われています。

仲野 ほおーっ(笑)。
若林 笑わないでよ、これで取れるんだから!
仲野 スンマセン。