若林 ただ、ときどき患者さんでワーファリンを服用されている人がいて、そうすると血が止まりにくい。
仲野 ワーファリンは昔からある抗凝固剤ですね。ビタミンKの働きを抑制して、血液が固まるのを防ぎます。心筋梗塞(こうそく)、脳塞栓(のうそくせん)などの予防に使われる薬です。
若林 押圧をかければ、しばらくすると止血するんですけど、高齢の方の場合は、念のためにお灸を重ねてしておくことがあります。お灸をすると、血小板が寄ってきて止血するので。
仲野 …ほんま?
若林 本当本当。血液の凝固を促す作用があるので。
仲野 それは、熱でそうなる?
若林 熱ではなく、血小板とフィブリンが固まるようです。
だから、抗凝固作用のある薬を飲まれてる方は、お灸をたくさんやらないようにします。せっかくお薬で凝固を抑えてるのに血栓ができやすくなることがあるから。
肌の触感や筋肉の量で
鍼の効きやすさがわかる
仲野 はじめて聞きましたわ。面白いなあ。鍼って効きやすい人、効きにくい人がありますか?
若林 はい、個人差がかなりあります。持続期間が短い人・長い人もいるし、一回やったら治ってしまう人もいるし、何度やっても症状がもどってしまう人もいる。
仲野 弱い刺激でも効く人に、強い刺激を与えるとどうなるんですか?
若林 効きすぎちゃいますね。文献でも、武官と文官では刺激の感受性が違うと書かれています。武官は筋骨隆々だから効きにくい、でも文官はいいもの食って動かないから弱く、鍼も効きやすいと。
仲野 この人は効きやすそうとか、わかります?
若林 わかりますよ、筋肉の量は関わってきます。筋肉がない人は効きやすいです。肌の感じでわかりますね。キメが細かいタイプは鍼刺激に弱い。
仲野 個体差があるということは、直接の生理学的な効き目ではないのかもしれませんね。もしそうなら、そんなに個体差が出ないでしょう。