神経が込み入っている部位に
鍼を刺すときは“深さ”に注意

若林 ちなみに、側頭部あたりの痛みや、片頭痛、肩の痛みも同じツボで解消されますよ。同じ経絡上にあるので、痛みを抑えることができるわけですね。

 東大附属病院にいた粕谷大智先生の講義で、三叉(さんさ)神経の第三枝の周囲を使って内耳の血流を改善させて、耳鳴りや頭痛を取るという治療も紹介されていました。その周辺に経穴もやっぱりあるわけです。

仲野 その位置は神経がえらく込み入ってるはずですが、もし間違えて神経を刺したらどうなるんです?

若林 えらいことになりますね。すごく痛い。深さは注意しないといけない。

仲野 太いもんじゃないから、ずばり刺してしまうようなことはめったにないとは思いますけど、危険性は感じるなあ。神経を刺したらあかんというのは、あるわけですよね?

若林 神経はだめですね。その人の体型・体格によって違いますが、神経や内臓への鍼は禁忌とされています。

仲野 仮に、神経や血管を刺してしまったらどうするんです?

若林 そこは刺さないようにするんです。神経は深さに気をつけて刺すことで過誤を防ぎます。太い神経は固いので表面で鍼がすべるらしいです。なので刺さらないとのこと。血管は刺さないために、左手で押さえてまっすぐ鍼を入れていくんです。そうすることで、静脈を傷つけることが避けられるので。

仲野 鍼が避ける?

若林 血管そのものを避けておく、ということですね。経験上、これで絶対刺さないです。でも、なかで組織が絡んだときに内出血が起こることがあります。そのときは手の感覚でわかります。ひっかかったときに「ぷっ」という感じがする。その場合は、注射のときと同じで、ぐっと押圧をかけて、内出血が広がらないようにしてあげます。