西洋・東洋医学界に衝撃が走った
巨人軍投手・江川卓の引退会見

若林 ほかにわかりやすい医療事故に気胸がありますね。鍼を肺まで貫通させてしまうことが原因です。肩に鍼をして電気を通電すると、筋肉が鍼を食って奥に入ってしまうことがあるそうなんです。それで肺尖部に到達してしまう可能性がある。

仲野 肩からなら、相当深く入らないと肺には到達しませんよね。

若林 そうです。よほどのことがなければ気胸は起こらないんですけど、粗雑なやり方をするとそういうことが起きてしまう。スポーツ鍼灸だと、肩まわりに強い鍼をする人もいるから。

仲野 スポーツ鍼灸というジャンルもあるんですか?

若林 あります。アスリートのケガやコンディショニングに特化した鍼灸です。鍼が太くて、電気通電をよく使いますね。スポーツ選手は筋肉が大きいから、刺激量を強くするんです。

仲野 スポーツといえば、昔、禁断の鍼が話題になったことありましたよね。巨人軍の投手だった江川卓が引退会見で「投げ切るためには、ここに鍼打つしかない。でもそこに打ったら来年は投げられなくなると医者に言われた」とかなんとか言って、鍼のせいで引退になったと騒がれた。いまはもう誰も知らんかもしらんけど、あのときはずいぶんと話題になりました。

若林 そう、あのときめちゃめちゃ話題になった!あとで、江川さんがそうじゃなかったと訂正したんですよね。あれね、鍼灸師の学会からすごい文句言ったんですよ。単純にもう肩が壊れていたというのが真相だった。でも、肩に鍼を打つと駄目になると当時は言われた。ひどいでしょ。おかげで、我々鍼灸師はしばらく冷や飯食ったんだと、私の学生時代の先生は言ってました。

 江川の場合は違うんだけど、昔は本当に一か八かの鍼灸みたいなやつもあったんですね。溺死した人を蘇生するのに、会陰にブスッと刺す…なんてのがあったんですよ。

仲野 ひぇーっ。死んでなかったら絶対に怒るで。