「話を聞かせれくれんかー」
亡き祖父母に上から目線で尋ねる
H先生は30代半ば程度の男性で、色白ぽっちゃり体型に短い黒髪、そして黒縁のメガネが印象的。
テーブル1つの小さな部屋で向かい合わせに座り、最初に簡単な説明を受ける。いわく、H先生が招く守護霊とは、筆者の場合はすでに他界している祖父母を指すらしい。
続いてカルテのようなアンケート用紙に、名前や職業、生年月日、そして祖父母を含めた詳しい家族構成を記入。特に祖父母のことを細かく聞かれたのは、あとで魂を呼び出す際に、うっかりまだ生きている人物を“招霊”してしまわないための下準備と見たが、どうだろう。
「さて、今日は主にどんなことを知りたいですか」
おもむろにH先生に聞かれ、「フリーランスなので、将来が少々不安です」と、わりと正直な悩みを口にする筆者。するとH先生は「わかりました」と短く答え、細長く折り畳んだ半紙のようなものを準備し始めた。
そしてこちらに拝むように両手のひらを合わせるポーズを要求し、その間に半紙を挟み込む。招霊に必要な儀式なのだという。
「では椅子にもたれず、背筋を伸ばして目を閉じていてください。招霊が始まると、ご自身の意図と関係なく体が前後左右に大きく揺れることがありますが、逆らわず受け入れるようにお願いします」
早くも猜疑心がむくむくと膨らんでくる。目を閉じた状態で体が揺れるのは、人のバランス感覚からすれば当たり前のことだ。それを霊的な現象の1つに思わせようとする手口が見え隠れする。
それでも言われるまま、半紙を手に挟んで目を閉じていると、やがてH先生は何やらブツブツ言いながら線香を焚いたり、数珠を振ったりし始めた(※すべて物音による想像だが)。そして、おもむろに筆者の祖父母に話しかける。
「この者を守護する者、おらんかー。おったらちょっと話を聞かせてくれんかー」
それまでの丁寧な標準語と打って変わり、昔話に登場する妖怪のような口調。それに、守護霊が筆者の祖父母なら、なぜ上から目線で話しているのかも気になってしまう……。