それでも交信を成功させたらしいH先生は、「この者、フリーで仕事をしているのは正しい道か?」「この者がいまいる場所は正しい場所か?」と、次々に質問を重ねていく。さらに、「答えがイエスならこの者の体を前後に、ノーなら左右に揺らして答えさせよ」とも。

 正直、とんだ茶番に付き合わされてる感が否めないが、15~20分ほどの交信を終えると目を開けることが許され、今後の人生へのレクチャータイムが始まった。

 印象的だったのは、「あなたは別れた女の生霊の影響を受けている。とんでもないのと付き合っていたようですね」とか、「あなたは本来、もっと高い位置にいられるはずだったのに」といった助言だが、いずれも余計なお世話の域を出てない。

 また、「股間のリンパ節に気をつけなさい。特に性病とか、いまは大丈夫みたいだけど今後は怖いですよ」とも言われたが、男性の相談者には高い確率で同じことを言っている気がしてならない。

 ちなみに鑑定料は1時間で1万2000円。まあ、そう簡単に本物に会えるわけなどないのである。

寺を継ぐ予定が大病を経て霊能者に
魂レベルのお世辞はまんざらでもないが……

 続いては、京都の由緒ある寺の息子だというO先生のケース。普段は関西在住だが、月に1~2度上京して客を取っているそうで、カウンセリングはファミレスや喫茶店で行われる。ちなみに筆者の時は、護国寺駅そばの喫茶店を指定された。

 指定の店に現れたのは、ニコニコと人当たりのいい、アラフィフくらいの坊主頭の男性だった。鑑定料は30分で5000円、延長も可能とのこと。

 カウンセリングは極めてざっくばらんで、O先生は聞いてもいないのに自分の生い立ちを長々と語り始めた。

 いわく、もともとは寺を継ぐ修行に励んでいたが、天啓を受けて会社員に転職し、7年ほどトップセールスマンとして活躍したものの、命にかかわる大病を患って退職。病床で苦しむうちに、それまで見えなかったものが見えるようになり、気がつけば医者もさじを投げていた大病が一夜にして治ってしまったという。

 それがこうして人を救う仕事(と自称していた)に鞍替えしたきっかけなのだそうだが、そんな自分語りが終わったのは20分ほどたってから。残り10分程度になって初めて用紙を取り出したO先生は、そこに職業や生年月日を書けと言う。

 そして「ちょっと、手を握らせてもらっていいですか」と、体感的には5分ほどのわりと長い時間、こちらの目をじっと見つめながら右手を握り続けたO先生。周囲からはさぞ異様な光景に見えていたに違いない。

「うん、すごくきれいな魂だ。僕がこれまで触れた魂の中で、トップ3に入るよ」