相続は誰にでも起こりうること。でも、いざ身内が亡くなると、なにから手をつけていいかわからず、慌ててしまいます。さらに、相続をきっかけに、仲が良かったはずの肉親と争いに発展してしまうことも……。そんなことにならにならないように、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)の著者で相続の相談実績4000件超の税理士が、身近な人が亡くなった後に訪れる相続のあらゆるゴチャゴチャの解決法を、手取り足取りわかりやすく解説します。
本書は、著者(相続専門税理士)、ライター(相続税担当の元国税専門官)、編集者(相続のド素人)の3者による対話形式なので、スラスラ読めて、どんどん分かる!【親は】子に迷惑をかけたくなければ読んでみてください。【子どもは】親が元気なうちに読んでみてください。本書で紹介する5つのポイントを押さえておけば、相続は10割解決します。
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

不動産を使った相続税対策は有効?

不動産を使った相続税対策の実態
国税書夫(以下、国税) 不動産を使った相続税対策も、前田先生はおすすめしないのですか?
前田智子(以下、前田) そもそも、なぜ不動産が相続税対策になるかというと、不動産の「時価」と、相続税を計算するときの「評価額」にズレが生じるからです。
たとえば7000万円で買った不動産が、相続税を計算するときは5000万円で評価されるとしたら、現金で7000万円をのこすより、不動産にしてのこしたほうが相続税は少なくなるという理屈です。
「タワマン節税」の仕組みとは?
国税 とくに都心のタワーマンションを買って賃貸すれば、時価と相続税の評価額に大きな差があるので、「タワマン節税」などと呼ばれていますよね。
無知相続(以下、無知) 現金をタワマンに代えるだけで節税できるのなら、相続税対策としてよさそうですが、実際は違うんですか?
賃貸不動産のリスク
前田 賃貸不動産を買うなら、きちんと収益が見込めるか検証しなくてはいけません。
たとえ相続税の節税になっても、空室になって家賃収入が入ってこないような物件に投資してしまうと、単なる損失ですからね。
それに、買う不動産の価格が適正かという問題もあります。たとえば「相続税対策になりますよ」と不動産会社からもちかけられて7000万円のタワマン1室をローンを組んで買ったのに、これを売ろうとしたら半値しかつかないとなれば、相続税の節税効果など吹っ飛んでしまいます。
アパートやマンションを買って、入居者に貸すということは、大家になるということです。収益性や管理リスクを考えずに買うと、痛い目にあいますよ。
節税効果よりも投資リスクを優先すべき
国税 たしかに不動産を買うのも投資ですから、節税効果の前に費用対効果をシビアに見極めないといけませんね。
前田 それに、国税さんもご承知のとおり、タワマンの賃貸不動産を使った相続税対策には税務署も目を光らせていますよね。
国税当局の厳しい監視
国税 はい。タワマンの賃貸不動産を使った相続税対策をした納税者に対して、税務署が「時価で不動産を評価して相続税を計算すべきだ」と判断するケースが実際に起きています。
これについて納税者と国が訴訟になるケースもあり、2022年4月には最高裁判決で国側が勝訴しました。
前田 そのように国税が判断すれば相続税対策の効果はなくなりますし、かえって追徴をくらう可能性さえあります。そんなリスクを負ってまで不動産を買う必要があるかと問われれば、やはり疑問なのです。
2024年からのタワマン節税の規制強化
前田 また、2024年1月1日から区分所有マンションの相続税評価額を時価の6割未満にできないルールに変更され、タワマン節税の効果は小さくなりました。
数十億円単位の資産をもつ人であればまだしも、相続税が少しかかるくらいのご家庭であれば、そのような節税方法はやめておいたほうがいいと思います。
やるべき相続税対策の優先順位
前田 3つの節税方法
①生命保険
②小規模宅地等の特例
③生前贈与
を順番に利用すれば、ほとんどの方は十分です。

不動産を使った相続税対策は有効? …「タワマン節税」に税務署が目を光らせている
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。