ワタミの農業事業が20年以上「赤字」なワケ
ワタミの農業事業が20年以上も赤字を脱却できないのには理由がある。それは、極めて高い理想を追求しているからだ。
単に「国産」のブランド価値を持つだけではなく、牛を放牧し、一般的な牛舎での穀物飼育を行わず、草のみで育てている。このような飼育方法を採用した牛は「グラスフェッド」(Grass-Fed、牧草飼育)と呼ばれ、全体のわずか0.2%しか存在しない。
特殊な農業モデルが赤字の一因となっているが、ワタミはサブウェイの買収を通じて、新たな収益源を確保しながら、農業事業の立て直しを図ろうとしている。
ワタミは、グラスフェッド牛の牛乳を使ったアイスクリームを製造・販売している。渡邉会長は昨年11月の2025年3月期上期 決算説明会でこう語っている。
「(グラスフェッド牛乳のアイスは)そんなに安くつくれないものですから、高級スーパー等々で販売している。ただ、高級スーパーと言ってもそんなにたくさん売れないんですよ」
「どこで売ろうかというと、実はサブウェイで売ろうと思ってます。カロリーは通常市販されているアイスの4分の1です。サブウェイ(の商品)もカロリーが低いということで非常に親和性があります。このアイスクリームは、サブウェイを使ってしっかり売っていきたい」
(2024年11月15日の決算説明会)
同じ理念で取り組んでいるのが、有機野菜の栽培だ。当然、割高になる。有機野菜は、化学肥料や農薬を使わず、遺伝子組み換え技術も用いない。環境負荷の低減を目指しているが、その分、病害虫や天候リスクに弱く、生産性が低い。儲かるはずのない取り組みだが、ワタミは15年以上も有機レタスの栽培を続けている。
ワタミのサブウェイ買収には、こうした背景がある。サブウェイを自社の農業事業と結びつける狙いだ。しかし、サンドイッチの品質向上につながるかは疑問だ。有機野菜にこだわるより、適切に農薬を使ったほうがおいしく、安定した供給もできる。