これを見ると、「約2000万円不足する」と試算した2017年の数字が、かなりマイナスが大きかったので、意図的に抽出したのではないかという気さえします。
65歳を過ぎても
約6割が働いている
ともあれ、この5年ほどで高齢者の節約意識が定着し、老後資金に対する過度の危機感は薄らいでいるのではないでしょうか。
老後資金の不足に対する不安が解消されつつあるだけではありません。
「老後2000万円問題」の試算のサンプルになっているのは、「家計調査」の「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦無職世帯」でした。
ただ、いまは60歳を過ぎても働く男性も女性もかなり多くなっています。つまり、サンプルの世帯は多数派ではないのです。
厚生労働省の「労働力調査」(2023年)を見ると、65~69歳で働いている男性は61.6%、60~64歳で働いている女性は63.8%。
70~74歳では少し減りますが、それでも男性の約42.6%、女性の約26.4%が働いています。
つまり、「家計調査」がサンプルにしている「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦無職世帯」は、どんどん少なくなりつつあるということです。
そして、高齢でも働いている世帯は、収入が出費を上回って、なかには貯金を増やしているケースもあります。
「『老後2000万円問題』についてはわかった。でも、ほんとうに必要な老後資金は、4000万円なんじゃないの?」
そう思われる方もいるでしょう。でも、この「老後4000万円問題」も心配には及ばないのです。
そもそも、「最低4000万円の老後資金」というのは、現在のような物価高が続くことを想定しています。
「物価上昇率3.5%」が
20年も続くことはありえない
この先、さらに物価が上がり続ければ、それに伴って支出もどんどん増えていき、家計の赤字が拡大します。そこから「4000万円」という数字が導かれたと推測されます。
では、物価がどれくらい上昇するのか。
ここでの物価上昇率は、「3.5%」とされていました。ざっくり計算すると、毎年3.5%ずつ物価が上がり続ければ、20年間で4000万円の老後資金が足りなくなるというのです。
ただ、これはかなり無謀な数字です。