
鳴り物入りで市場導入されたマツダ「CX-60」。ところが、マツダの想定とは違い、ユーザーやディーラーからは改良を求める声が多数、届く事態となった。改良モデルを公道で試乗し、どのように変わったのかを実感した。(ジャーナリスト 桃田健史)
なぜ、市場導入して間もないのに大幅改良に至ったのか?
「乗り心地が悪い」
2022年9月15日、国内で正式発売されて以来、CX-60に対して厳しい声が市場から上がっていた。
CX-60は、マツダの次世代に向けた事業戦略の大きな柱である「ラージ商品群」の第1弾という位置付けだったが、その出はなをくじかれた形だ。
全国のディーラーからの声、またCX-60ユーザーからマツダ本社コールセンターに直接届けられた声として、乗り心地の改善を求める声が多数あった。
こうした声をマツダは真摯に受け止め、発売から約2年半で今回の大幅改良バージョンの市場再投入となったわけだ。
CX-60の大幅改良については、マツダから昨年10月に正式なアナウンスがあった。
兵庫県内で行った報道陣向け「CX-80」公道試乗会の席で、マツダ取締役専務執行役員CTO(最高技術責任者)の廣瀬一郎氏は「CX-80開発の知見を踏まえて改良したCX-60を来年導入する」と発表していたのだ。
その時点で、CX-60発売から約2年であることを考えると、マツダが社内でCX-60の大幅改良を決断したのは、発売後のかなり早い段階であったものと推測できる。
市場からの声はいろいろあるにしろ、「乗り心地が悪い」と言われる根拠は、特に路面の段差を乗り越えるときの後輪からの突き上げの強さに起因する。
一般道路ではマンホールの上、また東京周辺であれば首都高速道路での道路の継ぎ目の上を通過する際、「ガツン!」といった感じで後輪からクルマ全体に振動がある。
こうした乗り心地について、一般的には「足(サスペンションの意味)が硬い」と称されることがある。
数十年前までならば、「ドイツ車は、足が硬い」と言われることが多く、路面の段差からの突き上げがそれなりに大きかった。
だが近年は、ドイツ車も、また日本のスポーツカーも乗り心地はかなり改善されている。
そうした中で、CX-60の「ハンドリングと乗り心地の特性」が一般的には理解されにくかった、ということであろう。