ただ、日本ではあいまいでグレーなものは、普通の生活を送っている大人の目には入ってきにくい。小さな子どもが「なぜ?」と気にする機会もほとんどない。
中国はいろいろな格差がむき出しになって、私たちの視界に入ってくる。大人は目に入っても見えないふりをするが、真っ白な子どもは知らない動物や乗り物、肌の色が違う人を見たときと同じように、「あれは何?」と無邪気に聞いてくる。
戸惑ったり躊躇したりするたびに、私自身が社会とソウに試されているような気持ちだった。
100円ショップの商品を
1000円で転売する中国人
2010年代に日本に留学した中国人のほとんどがやっていた副業が「代購」、簡単に言えば転売ヤーだ。中国人の所得が上がり、海外製品を“爆買い”するようになると、海外に住んでいる中国人は一斉に転売ヤーになった。留学生たちは日本に着くとまずネットショップを開設し、自身のSNSで「仕入れたもの」「仕入れられるもの」を宣伝する。注文が入ると手数料を上乗せした価格を受け取って、発送する。
ドラッグストアや家電量販店で購入したものを、自身の利益を上乗せして転売し、郵便局から発送するという非常に原始的なビジネスモデルなのだが、中国政府が個人輸入に関する法律を見直すくらい広がった。学生転売ヤーがものを売るのはSNSでつながっているリアルな友達なのに、100円ショップで買ったコスメを1000円で転売したりしていて、DNAの違いをまざまざと感じた。
いや、DNAというより環境なのかもしれないと、中国で暮らしているうちにどんどん商魂たくましくなっていくソウを見て思った。
ソウ10歳の夏、小学校でフリーマーケットと縁日を足して2で割ったようなイベントがあった。ソウは夕方、本を何冊も抱えて帰って来た。聞くと、家からペンを2本持って行って、物々交換で少しずつものをグレードアップし、最後に自分が気に入っていた漫画のシリーズ一式に換えたという。
そこまでは私も感心した。だが、ソウはこの体験で味を占め、どんどんあこぎになっていった。
ゲーム機を1等賞品にして
くじ引きで儲けた10歳の息子
次の縁日イベントの日、ソウはお手製のくじ引きを作って行った。
番号を書いた小さな紙に糸をつけ、紙の部分を中身の見えない箱に入れる。糸を3本引いて現れた数字の組み合わせが、1等賞から3等賞に該当すれば賞品がもらえるという設計になっていた。