「どんな仕事をしているんですか?」→NASA清掃担当者の答えに「仕事のモチベ爆上がり」のヒントがあった!写真はイメージです Photo:PIXTA

社長の言うことにまったく共感できない労働者でも、自分の仕事に意義を見出すことはできる。そこで重要なのは、自分が生きる目的を明確に把握することだ。第二次大戦中、ナチスの強制収容所生活を生き抜いたユダヤ人心理学者で、世界的ベストセラー『夜と霧』の著者であるヴィクトール・フランクルの言葉は、すべてのビジネスパーソンに希望を与えるはずだ。※本稿は、ダニエル・ゴールマン著、ケアリー・チャーニス著、櫻井祐子訳『ゾーンに入る EQが導く最高パフォーマンス』(日本経済新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

乗客たちに笑顔を浮かばせた
バス運転手の「よい1日を!」

 あれは数十年前のことだった。ニューヨーク・マンハッタンの蒸し暑い夏の日、ダン(編集部注/著者の1人である、ダニエル・ゴールマン)はM101番(編集部注/バス路線のルート名)のバスで三番街を走っていた。あの陽気で明るい中年のアフリカ系アメリカ人のバス運転手のことを、ダンは今も覚えている。運転手はバスが通り過ぎる場所を、誰に言うともなしに楽しげに解説していた。ほら、あそこでバーゲンをやっていますよ、あの建物や店にはこんな歴史があるんです、今通った映画館でやっている映画の評判はこうですよ、そこの美術館でやっている展覧会は必見ですね。

 ダンが覚えているのは、運転手が語った内容ではない。彼からほとばしるように広がっていた、はつらつとした気分だ。明るいムードはバス全体に伝染した。あの暑苦しい8月の日、ほとんどの人が陰鬱な気分でバスに乗ってきた。だがバスを降りる時、運転手の「よい1日を!」の言葉に返した笑顔は、彼らがすでによい1日に向かっていることを物語っていた。

 このできごとの数年後、ダンはニューヨーク・タイムズ紙の死亡記事で、運転手の名がゴヴァン・ブラウンだったと知った。記事によれば、ブラウンはロングアイランドの黒人教会の元牧師で、乗客を自分の信徒のように見ていたという。彼はこの仕事に、「信徒を導く」という大きな目的を持ってのぞんでいたのだ。

 ゴヴァン・ブラウンの目的意識は、雇用主である都市交通公社(MTA)のニューヨーク市交通局が掲げる使命とは対照的だった。交通局の使命はひと言で言えば、「乗客を効率的に目的地まで運ぶこと」であり、乗客の心身の幸福への配慮とは無関係だった。MTAの無味乾燥な公式使命には、こうある。「安全、正確で、信頼性の高い、清潔な交通手段をコスト効率よく提供して、地域の生活の質と経済活力を高めます」

CO2を排出する化石燃料企業が
気候変動活動家を雇うメリット

 だが意外にも、個人の目的と組織の使命の不一致は、それほど問題ではないかもしれない。働く人にとっては両者が一致していることよりも、自分の目的意識をはっきり持つことの方がずっと重要な場合があるのだ。