CREIO(編集部注/著者らによって創設された、組織における感情的知性を研究する共同事業体)の会員、コーン・フェリー研究所のシーニュ・スペンサーが行った研究は、自分の目的を明確に意識し、組織でどんな仕事をしていようとも、それを自分の目的と折り合いをつけようとする姿勢、すなわち「パーパスフルネス」の重要性を強調する。パーパスフルネスは、仕事意欲とも、組織への愛着とも相関が高い(注1)。
たとえば化石燃料企業が、CO2排出ゼロを訴える気候変動活動家を雇うことの意外なメリットを考えてみよう。企業は活動家の先見性と精力に助けられて、代替エネルギーによるCO2排出削減をめざす部門を立ち上げ、それが会社の主要戦略になるかもしれない。
要するに、個人の目的が所属組織の使命と完全に一致する必要はないのだ。ゴヴァン・ブラウンの例が示すように、組織はその使命と必ずしも一致しない、強い目的意識を持つ人材を招き入れることで、恩恵を得られることもあるのだから。
もちろん、自分の仕事に意味を見出せたゴヴァン・ブラウンのような、幸運な人ばかりではない。心と仕事の価値観の対立は大きなストレスになりかねない。ある学校の養護教諭は、職業倫理に反する仕事を校長にくり返し要求され、耐えられなくなって仕事を辞めてしまった。
このように、個人としての価値観と仕事の価値観の折り合いは、目的意識を持ち、「この努力は自分の使命に役立っている」と感じられることの大切さを物語っている。
仕事に意味を見いだす
NASAの清掃担当者の矜持
こんな逸話がある。1960年代にNASAで働く清掃担当者が、「どんな仕事をしているんですか」と聞かれ、「人類を月に送る手伝いをしています」と答えた。彼もあのバス運転手と同じで、自分の仕事に大きな目的を見出していたのだ(注2)。
報酬や地位に引かれて仕事に就いたとしても、その仕事にどれだけの意欲と情熱を持って取り組めるかは、目的意識にかかってくる。年収が仕事満足度に与える影響は限定的であることが、大規模研究でも示されている(注3)。
仕事を「やりがい」でランクづけすると、医療や福祉関係などの明らかに利他的な仕事が上位に挙がる(注4)。だがNASAの清掃担当者のエピソードが示すように、どんな仕事にも自分なりの意味を見出すことはできるのだ。
注2 A. M. Carton, “‘I’m Not Mopping the Floors; I’m Putting a Man on the Moon’: How NASA Leaders Enhanced the Meaningfulness of Work by Changing the Meaning of Work,” Administrative Science Quarterly 63, no. 2 (2018): 323-369.
注3 T. A. Judge et al., “The Relationship Between Pay and Job Satisfaction: A Metaanalysis of the Literature,” Journal of Vocational Behavior 77, no. 2 (2010).
注4 たとえば以下。“The Most and Least Meaningful Jobs,” Payscale, http://www.payscale.com/data-packages/most-and-least-meaningful-jobs.