
自分で生み出したアイデアは人に渡したくない。社内にそんな考えがはびこっていたなら、どんなに優秀なメンバーが集まっても成果は上がらない。お互いが心を開いて協力し合えるチームは、どうやって作られていくのか。※本稿は、ダニエル・ゴールマン著、ケアリー・チャーニス著、櫻井祐子訳『ゾーンに入る EQが導く最高パフォーマンス』(日本経済新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
優秀な人材を集めただけでは
優れたチームにはならない
グーグルのソフトウェアエンジニアは、優れたチームをつくる方法を心得ているつもりだった。「三人寄れば文殊の知恵」という日本のことわざの通り、超優秀なメンバーを集めれば、すばらしいプロダクトを生み出せると信じていた。
残念ながら、そうではなかった。そもそもグーグルには、とびきり優秀な人材しかいないのに、だ。そこでグーグルは、優れたチームとそうでないチームの違いを調べるために、社内の200近いチームのデータを集めることにした。調査対象はエンジニアリングまたはセールスのチームで、生産性の高いチームもあれば低いチームもあった(注1)。
グーグルの研究者は、チームについて考え得るすべての側面に関するデータを収集した。たとえばチームの構成、メンバーの特性(勤続年数、階級、勤務地等)や性格(内向性、勤勉さ等)といったデータだ。また、「チームでは異なる意見を安心して発言できると感じる」といった項目に答えてもらうことによって、チームの集団的特性についても調べた。
結果、チームの成功に最も重要な要因は、「誰がチームにいるか」ではなく、「メンバーがどう協力しているか」だった。なかでも「群を抜いて」重要な要因は、心理的安全性だった。成功しているチームのメンバーは、「和を乱すと思われないだろうか」とか、グーグル社内ではさらに悪いことに「無知や無能だと思われないだろうか」などと心配することなく、安心してリスクを取れると感じていたのだ。
アイデアを共有するために
欠かせない「帰属意識」
あなたはチームに帰属意識を感じるだろうか?チームを家族のように感じられるだろうか?これらも、心理的安全性を生み出す手がかりとなる、重要な問いである。