間違いだらけのDX人材不足、ハイクラス社員は実は隣にいる?日本企業が気づいていない「発達特性」という武器ニューロダイバーシティマネジメント研究会を主催する日本総合研究所の木村智行氏 撮影:ダイヤモンド・ライフ編集部

身の回りにも
特性のある人はいる

 こうした海外事例に比して、国内でもニューロダイバーシティ活用を進めるべく始まった日本総研と企業の研究会。会を主導する木村氏が発達特性に関心を持つきっかけとなったのは、社内のヘルスケア分野のエキスパートから「発達障害に真剣に向き合わないと、今後より深刻な社会課題になる」という話を聞いたことだった。知人にも発達障害がある人がおり、発達障害という社会課題とどう向き合えばよいのか考えていた。

 研究を開始して、知れば知るほど共感できる部分があり、過去に関わった人々などにも発達障害の特性があったのではないかと思い当たるふしがあった。人口の約1割が何らかの発達障害の特性を持つと言われており、次第に身近な課題として捉えられるようになったと言う。

 長年、新規事業開発やイノベーションに関わる仕事に携わってきた木村氏は、その経験上、ものの見方の多様性が重要だと考えてもいた。発達障害のある人々の中には非常に突出した能力を持つ人も多く、著名人でもそれを公言する人が少なくない。しかし、必ずしも社会で適切に評価されていない現状があり、もし周囲の理解があれば、より活躍の場が広がったのではないかという問題意識を持つに至った。

「仕事上のコミュニケーションなどに困難は感じないが、突如あまり人と話をしたくないと思う時は誰しもがあるはずだ。それでASD気味ではないか?と思って専門家に見てもらうと、ADHD的特性があると指摘された人もいる」と身近な経験を語る。仕事や日常生活に特別な困難を感じていなくても、身近なところでこのように新たな理解が深まると、研究推進の原動力になると話す。