間違いだらけのDX人材不足、ハイクラス社員は実は隣にいる?日本企業が気づいていない「発達特性」という武器ニューロダイバーシティマネジメント研究会のグループディスカッションの様子 提供:日本総研

解決すべき問題ではなく「生かすべき可能性」へ
本質的な視点の転換が求められる

 研究会はあえて「発達障害」と言わず、「ニューロダイバーシティ」という言葉を選択している。それは、障害と表現するとそれが「問題」として扱われるのに対し、「ニューロダイバーシティ」という概念は「可能性」を示唆するからだと木村氏は説明する。といっても、これは単なる言葉の置き換えではなく、本質的な視点の転換を意味している。

 そもそも、障害の捉え方には、「医学モデル」と「社会モデル」の2つの代表的なアプローチがある。定型発達に対置して、障害を、本人に起因する治療すべき「病気」として考えるのが医学モデルでの捉え方。「社会の制度・環境・文化が本人にとって困難をきたす状態」と考えるのが社会モデルでの捉え方だ。

 ニューロダイバーシティという言葉の使用は、発達特性のある人を医学モデルから社会モデルで捉え直すことでもある。発達特性は現状、定型発達に有利な環境に置かれることで、社会との摩擦に直面し、十分に能力を発揮できていない。逆に言えば、定型発達ではなくとも適切な環境が整えば、その特性を生かした能力の発揮が可能になるということだ。

 それは、発達障害を「解決すべき問題」から「生かすべき可能性」へと捉え直す発想の転換を促す。「発達障害がある人が困っているという現状の問題は解決すべきではあるものの、発達特性が強いと分かった人やその周囲の人が発達特性がある人の得意なことを活かそうと思えることが、社会全体として根本的な課題解決になる」と木村氏は説く。

 なお、脳神経の発達には個人差があり、その特性の強弱は連続的なスペクトラムとして存在する。いわゆる定型発達と言われる発達特性のない人々も含め、すべての人がニューロダイバーシティの中に位置づけられることは前回も述べた通りだ。