専門家が見抜いた真実
サリン事件の核心とは

 彼がアメリカ政府に上げたレポートはイギリスの関係者にも伝わり、翌年の1995年3月19日、イギリスの保守系高級紙『サンデー・タイムズ』に「カイル・オルソンの松本サリン事件レポート」という記事が掲載されました。

 それから16時間も経たない翌日、日本時間の3月20日、地下鉄サリン事件勃発のニュースが世界中に流れました。

『サンデー・タイムズ』の読者は、「まるで予言者のようなオルソンとは、一体どんな人だ?」と不思議に思ったことでしょう。

 私たち番組スタッフは再び彼を招いて、事件を調べてもらいました。

 そうしましたら、さすが専門家です。現場から数時間で戻ってきて、

「草野さん、サリンという毒ガス兵器は、純度が100%に近いと、製造して時間が経っても武器としての性能は変化しません。しかし、純度が低いと、水と結びついて加水分解してしまいます。

 調査の結果から、今回製造されたのは、おそらく1カ月ほど前だと思われます。そして、純度は60%程度で、これはサリンとしては粗悪品です。

 もしもオウムのグループが次の攻撃をしようとしても、1カ月くらい前に製造したサリンだとしたら、その威力はそれほど強くないものになっている可能性が極めて高いと思われます。したがって彼らが2次、3次攻撃をくわだてても、思ったほどの威力はありません」

 という、少しは安心できる情報も交えて提供してくれました。

 世間を大きく揺るがせた事件を目の当たりにした視聴者の方は、専門家の解説を求めたのでしょう。オウムの情報を知るには『ザ・ワイド』だと、午後の番組にもかかわらず視聴率は常に10%を超え、20%を超えたことも3回ほどありました。

 夜にも特番を何度か組みました。そのときにもオルソン氏に出演してもらい、いろいろなテーマについて討論を行いました。

討論の場で露呈した
オウムの危険な実態

 1995年の緊急スペシャルでの出来事です。検証する立場としてオルソン氏が、オウム教団からは、幹部の村井秀夫氏と上祐史浩氏が出演しました。

 村井氏は教祖の麻原彰晃氏に次ぐ教団のナンバー2で、オウムの科学技術部門の最高責任者、上祐氏は教団の広報担当でした。