名キャスター・草野仁が驚いた!演歌界の大御所・五木ひろしが18種類の楽器を練習するワケ『世界・ふしぎ発見!』などで知られる名司会者・草野仁氏

『世界・ふしぎ発見!』などで知られる名司会者・草野仁氏は、半世紀にわたるキャスター人生で「伝える」技術を培ってきた。草野氏によると、日本人の多くは「伝え下手」であるという。そんな日本においても、理想的なコミュニケーション術を身に着けている人は存在する。日本の人々が伝え下手な理由と、草野氏が出会ったコミュニケーションの達人、五木ひろし氏のエピソードを紹介する。※本稿は、草野仁『「伝える」極意 思いを言葉にする30の方法』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。

日本人が話し下手な理由は?
歴史が育んだ静かな文化

 伝え方の極意について、具体的なお話に入る前に、まずお伝えしたいことがあります。

 一般的に日本人は、外国人に比べて、人前で話をすることがあまり得意ではないと言われています。交渉下手だとか、表情に乏しいとか、自信なさそうだとか、他国からいろいろと指摘されているのをご存じの方もいるでしょう。

 無理もないことです。歴史的にも文化的にも、もともと日本人は、「人前で話す」経験を重ねてきていないからです。

 日本人は、海に囲まれた島国で他国からの侵略をほとんど経験せず、ほぼ同じ言語を使って、おおむね平和に暮らしてきました。

 とくに江戸時代には、士農工商という身分制度はあったものの、大きな騒乱もそれほど起きない社会が200年あまりも続きました。その間、お上(支配者)の意思は、文章で書かれた「お触れ」という形で庶民に伝わっていきました。

 また、学問や教育は書物によって広まっていました。

 歴史の教科書には、寺子屋で「読み・書き・そろばん」を教えていたことが書かれています。

 そのような状況ですから、過去の歴史の中で、日本人が、話し言葉を用いて何か議論し合ったり、討論をしたりする場面は、ほとんどなかったと思います。

欧米は議論で磨かれた?
日本と異なる言語文化

 いっぽう、欧米に目を向けてみましょう。

 紀元前、ユーラシア大陸と地続きの古代ギリシャなどの文明は、髪や肌や目の色の違う多様な人たちによって社会が作られていました。