「レシピ通りに作ったのに、なんだかおいしくない……」そんな経験はありませんか? それは、レシピをシンプルに見せるために、「料理上手なら感覚でわかる」と省かれた大切なポイントがあるからかもしれません。書籍『レシピ未満のおいしい食べ方』では、これまでのレシピ本には書かれなかった、本当に「料理をおいしくするためのコツやポイント」をわかりやすく解説。さらに、ひとつの食材で作れる料理、火を使わずにできるもの、直感的に作れるシンプルな調理法など、「レシピと呼ぶには簡単すぎる」食べ方を通じて、一生モノの「料理の秘訣」が身につきます。いつもの料理をもっとおいしくしたい方はもちろん、料理初心者や苦手意識のある方にもおすすめの一冊です。(監修/料理研究家・管理栄養士 藤井恵)

レシピに書けないことがある

「なぜ、レシピ通りなのにおいしくない?」その意外な理由写真:福尾美雪

私が料理研究家として活動を始めてから、もう25年以上になります。
そのなかでたくさんのレシピを提案してきましたが、「本当にすべてを伝えてこられたか」ということについては、振り返ると疑問を感じます。

というのは、レシピはなるべく短いほうがいいというのがレシピ本の常識だから。
「読者のみなさんは毎日忙しいなかでごはんを作っているのだから、長くて難しそうなレシピを紹介しても喜ばれません」といわれると、それはもっともだと思います。
でも、短くするとどうしても、小さいけれど大切なあれこれが省略されてしまうのです。

例えば、ドレッシングの混ぜ方。
レシピではよく「塩・こしょう、酢、オイルを混ぜる」と書かれますが、本当はオイルだけを後から混ぜるほうが乳化しやすくておいしいというのは、料理のプロならみんな知っていることです。

野菜の下ゆでも、たっぷりの湯ではなく、野菜の頭が少し見えるくらいで十分。ゆで時間にしても、私が実際にゆでているところをお見せしたら、驚かれるほど短いと思います。

また、冷奴はつるんとした面を上にして盛っている料理写真がほとんどですが、実は切った断面を上にして、しょうゆをかけたり薬味を盛ったりしたほうがおいしい。そのことに気づいてから、私はいつも断面を上にして盛っています。

こんな風に、料理に携わる人なら必ずやっていること。また、私自身が日々ごはんを作るなかで「こうしたほうがおいしい」「こうしたほうがラクで早い」と思っているポイントが、レシピというフォーマットの外にはたくさんあります

どれも、やるとやらないとでは大きく変わることばかり。
けれど、レシピというフォーマットでは書くところがないのです。

実は料理研究家としていちばんお伝えしたい、そんな「レシピ未満」の料理メモのようなお話をまとめたのが『レシピ未満のおいしい食べ方』です。

もし私がキッチンで隣に立っていたら「こうするといいのよ」と伝えたいコツ。
あるいは、スーパーで出会ったら「私はこれ、いつもこうして食べるの」なんておしゃべりしたいこと。これまで書くところがなかったそれらを、あらためて一つひとつ拾い上げてみました。

さらに、レシピというには簡単すぎて紹介する機会がなかった料理。
忙しさのあまり思いついた、手抜きでおいしくなる調理法(きっとびっくりします!)。
また、この際なので恥ずかしながら、料理ともいえないけれど大好きな「食べ方」まで、一緒に紹介しています。

レシピ未満の小さなことでも、そこにある私の考えは、レシピを提案するときと変わりません。「誰でもちゃんとおいしく作れるようにしたい」とつねに考え続けてきた私の、いわば料理づくりのエッセンスのようなものです。

「へえー、そうすればよかったんだ!」「今度買ったらそうやって食べてみよう」という感じで、気軽に試していただけたらうれしく思います。

そして、毎日の料理が「もっとおいしい!」に変わりますように!