それだけに、各業界は、役所の認可をとるためにさまざまな努力をしています。そこに癒着の原因があり、役所は許認可権を盾にして官僚の天下り先を用意させたり、金銭的な便宜をはからせたりといったことが、半ば公然と行われてきました。

 そうした許認可は、企業や個人の自由な行動を阻害し、経済を停滞させる原因にもなりますが、省庁が自らの利権を自発的に手放すわけもなく、これまで「規制廃止」ではなく、「規制緩和」でお茶を濁されてきました。

政令、省令、通達、行政指導の裏側はこうなっている

 日本では、法律に書かれているのは大まかなところで、運用上の細則は法律には書かれていません。

 それを補うのが「政令」や「省令」といった細かな規則です。日本の法律の場合、「政令の定めるところにより」とか「法務省令で定める日までに」といった表現で、肝心な部分を政令や省令にまかせている場合が多く、そこにも官僚の権限が強くなる原因があります。「政令」や「省令」は、国会審議の必要はなく、官僚が勝手に書けるからです。

 それらの細かな規則には、大きく分けて、内閣が発令する「政令」と、各省が発令する「(内閣府の)府令」や「省令」があります。

 さらに、役所の上級機関が下級機関に向かって出す文書は「通達」と呼ばれます。政令や省令は、官報によって一般国民にも知らされますが、通達は行政内部のことなので、国民は知らないままになっている場合が少なくありません。

 さらに、理解しにくいのが「行政指導」です。これは、各省庁が必要に応じて、関係業界に指導項目を伝えるもので、法的な拘束力はないので、罰則を伴いません。しかし、昔ほどではないにせよ、それに従わないと、役所からその業界や企業にしっぺ返しが来るのは確実です。

 というわけで、政令・省令・通達・行政指導は、各省庁、官僚、役人が国民や経済に対する支配力を強めるための手段になっているのが実情です。