仕事がデキない人に共通する「午後の耐えられない眠気」、原因は“残念な食習慣”にあった!山田 悟氏

 令和元年「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、週3回以上「日中、眠気を感じた」人は男性32.3%、女性の36.9%を占め、日中の眠気は「睡眠の質」についての悩みのうち最も多い。

 日中の眠気は、寝不足だけでなく、血糖値が乱高下する「血糖値スパイク」が原因の可能性もある。しかもこの血糖値スパイクは、通常の健康診断では発見できない。食後の血糖値乱高下による眠気や疲労感といった不調を「糖質疲労」として問題視するのが、北里大学北里研究所病院院長補佐・糖尿病センター長の山田悟氏だ。

 そもそも山田氏が「食後の眠気」に着目したのは、糖尿病治療で糖質摂取を緩やかに制限する食事法(ロカボ。詳しくは後述)を指導した患者から「食事を変えたら昼間の眠気やだるさがなくなった!」という声が多く寄せられたことがきっかけだったという。

「低血糖状態」の予兆として
眠気やだるさ、イライラが起こる

 血糖値が上がりにくくなると眠気が消える――その理由はどこにあるのか。

 食事をすると、食事に含まれる糖によって血糖値が上昇する。健康な人であれば、すい臓から分泌されるインスリンの働きによって、食後1~2時間後の血糖値は140mg/dlを超えることなく下がる。しかし、糖質を取りすぎる、インスリンが適切に働かない、といった理由から食後に血糖値が急激に上がり、140mg/dlを超えると、その反動で急激に下がる人がいる。グラフにすると血糖値の乱高下が鋭く尖った形になることからこの現象を「血糖値スパイク」と呼ぶ(下図)。

【食後2時間の血糖値はどう変化する?】

※山田 悟氏への取材を元に作成

「低血糖は、冷や汗や手足の震え、意識障害などが起こる危険な状態です。低血糖状態にならないように、その予兆として起こるのが、眠気やだるさ、イライラ、飢餓感といった自覚症状です」

 低血糖状態の予兆として起こる、このような「糖質疲労」の症状は、ある意味では生き物としての正常な反応だ。

「『今は動くのをやめろ、眠れ』という脳からの命令によって眠気やだるさが起こります。さらに『今すぐ糖を摂取して血糖値を上げろ』という命令によって、何かを食べなきゃと空腹感が強まる。また、自律神経の交感神経系が優位になるために、イライラ感が生じると考えられます」

 眠くなったらプチ昼寝をすればすっきりするから大丈夫と思うかもしれないが、糖質疲労を放置するのは危険だ。

「食事のたびに血糖値スパイクを起こしていると、血管に慢性的に負担がかかり、動脈硬化、糖尿病といった病気の発症リスクが高くなります」