5年先ではもう遅い
農業に今こそ参入すべきワケ
昨年、米利休氏は自身のブランド「利休宝園」を立ち上げ、生産した米の一部を希望者に販売。数量が限られていたが、フォロワーらが多く注文し、すぐに完売した。当初、米利休氏が描いていたプランよりもはるかに順調だという。
しかし、それまで同氏が行っていたIT系の仕事と農業のスピード感はまったく違う。その点については、どう感じているのか。
「ネット系の事業だと実行したことに対する反応がすぐに返ってきます。しかし、稲作は、1年に1回しか作れず、進化も変化も退化も遅い。そのスローさは感じますが、逆に言えば、一度作った設計やサイクルなどがすぐに破綻する可能性が低く、変化に時間がかかるということ。そのぶん、事業としての安定性は高いと思います。また、稲作は天候にもよりますが作付面積で大体の収益が見通せます。この点でも、事業としては安定性が高いなと思います」
近年では、トヨタやNTTなど大手国内企業も農業に参入するなど、にわかに農業を取り巻く環境が変わってきている。米利休氏も「現在が転換点」と語る。
「僕のような若い世代が農業を始めて、いろんな新しいことをやる人も増え始めています。5年、10年後には農業経営がうまくいく事例がどんどん増えてくる可能性が高い。そのタイミングで参入するのでは、すでに遅いんじゃないかなと。その頃には、大きな法人が大規模に農業を行いやすい状況になるからです。特に稲作の収入はおおよそ、面積で決まりますからね。なので、僕は今こそが農業のビジネスチャンスだと思っています。もちろん、リスクは大きいですが、勝ち上がった先に得るものは大きいのかなと」
最後に米利休氏の今後の目標をこう語った。
「僕は工学の勉強もしていたので、農業で使える機械を作れたらいいなと思っています。それはトラクターのような大きなものではなく、例えば画像解析で稲と雑草を見分けて、雑草だけ刈る機械とかですね。また、農家が食べていけるような金額で流通させる仕組みを作り、いずれは自分の地域も包括するような農業法人にできたらと思います」
既存のやり方にとらわれない若い農業経営者に対しては批判の声もあるが、米利休氏のさらなる活躍に期待したい。