テレビ局や撮影所に食堂がなければお弁当になりますが、健康面で偏らない対処法として私はたまにお弁当を遠慮してりんごを1つ、丸のまま持参します。切らずにバッグに入れるのでとても楽です。お昼ご飯の代わりにしたり、早朝は、朝ご飯用に出される唐揚げつきのおにぎりを遠慮してロケバスの中でいただいています。さすがに目立つので注目されますが、体形維持にも良いので真似する女性もいます。
このやり方は、『チャーリーズ・エンジェル』(2000)という映画の現場で主演女優3名がヘルシー志向だったため、彼女たちのリクエストでフルーツの多い食事が出されたというエピソードからヒントを得ました。
改善に向けての意見には「食事が取れないなどの過失があった場合にはペナルティを設けてほしい」「食事についてあらかじめ契約で決めてほしい」などの声があります。諸外国の食事の契約状況と比較すると当然のことでしょう。
夢の裏で“過労死寸前”
芸能界の過酷な日常
他方で政府による映画や演劇分野への助成金が飲食費を経費の対象外としているため、「創作環境向上のために対象にしてほしい」という声もありました。なかなか芸能業界の働き方の特殊性は理解されず、取引の適正化や助成金等の保護施策に反映されにくいようです。
きらびやかに見える芸能業界で長時間労働に悩まされている人が多いとは、なかなか想像できないのではないでしょうか。
数十分ほどのテレビドラマを制作するためには、膨大な時間と日数が必要です。ほんの数秒の感動的なシーンでも、撮影する場所に行き、陽のあたる時間を待ち、雨が降れば晴れるのを待って、場合によっては宿泊をして、やっと撮影できたら衣装を着替えてメイクを落として、他の撮影スタッフの機材の撤収作業を待ってからロケバスで帰ります。数秒の背後に、このような計り知れない時間と日数がかかっています。
夢を提供する側としては、仕事上の痛みや辛さを見せることは観客やファンに対する裏切りと感じられてしまうため、無意識に苦労を隠したいと思いがちです。
一方で、個人事業者であるため、「自分の働く時間を自由に決めることができるはずだから」ということで、どんなに長時間労働をしても法的に問題にならないとされてしまいます。これでは実態が外の世界からはわかりません。
しかし現状は、徹夜が当たり前であったり、仕事のストレスが原因と思われる自殺が頻発してしまうという実態があります。厚労省が芸術・芸能分野の働き方の実態について調査した『過労死等防止対策白書』の作成に取り組み始めたのは当然のことでしょう。