労基法も三六協定も無関係…
最低賃金以下で命を削るスタッフ

 労働者ではないフリーランスを雇うのに、労働基準法を守る必要はありません。会社が労働者と結ばなければいけない三六協定(編集部注/労働基準法第36条に基づく「時間外労働・休日労働に関する協定」=労働者と会社が締結する労使協定)も無関係なので1日8時間・週40時間以内の労働時間に制限する必要もありません。したがって労働時間を管理しなくてよいので、タイムカードで時間を測ることもありません。

 たとえば、舞台スタッフのAさんは、「最低賃金より報酬が低くても仕事が貰えるだけましだから、みんな文句を言わずに働いているんです。そのかわりあちこちでたくさん働かなければ生活できません。全部足すとものすごい長時間労働になってしまいます」と言います。

 アンケートにはその実態がよく現れています。

・一日の労働時間、8時間以上  91.0%
・徹夜で仕事をしたことがある  66.7%
・平均睡眠時間、8時間以上  3.4%
・平均睡眠時間、6時間以下  59.2%

 どう見ても、労働と睡眠のバランスを崩しています。睡眠時間が4時間以下は危険とされていますが1割近くもいます。

 しかもスタッフは重いセットや音響機材などを運ぶ重労働や、天井に近い高所での照明器具のつけ外しなど、危険な作業をします。パフォーマーも台本を暗記したり大勢の人の前で演技や芸をするなど、失敗の許されない極度の集中力を要する仕事をしています(複数回答)。

・仕事中に寝不足で困ったことがある  83.8%
・寝不足が原因の事故や怪我(見聞きしたことがあるを含む)  50.8%

 原因のわからない脳梗塞や突然死も少なからず起きています。特に年末年始の忙しい時期やリハーサル不足で負担が多い作品で、開演やクランクインに間に合わせるために無理をしがちです。