弁当は賞味期限切れ、報酬は最低賃金以下…夢の裏で「過労死寸前」まで働く芸能スタッフの過酷すぎる日常写真はイメージです Photo:PIXTA

近年、芸能界に蔓延するさまざまな問題が次々と浮き彫りになっている。中でも、映画やドラマの制作に携わる人々の労働環境には、大きな課題が存在している。日本芸能従事者協会の代表理事を務める俳優・森崎めぐみ氏は、現場を支える芸能人やスタッフを対象に労働環境に関するアンケートを実施した。その結果、明らかになったのは、長時間労働が常態化し、睡眠時間が削られることは当たり前、食事をとれない日も珍しくないという過酷な実態である。※本稿は、森崎めぐみ『芸能界を変える――たった一人から始まった働き方改革』(岩波書店)の一部を抜粋・編集したものです。

ロケ弁VSシェフのビュッフェ…
映画現場「食事格差」がすごすぎた

 ドラマや映画ではシーンごとに自然に場所が移りますが、スタッフやキャストはその都度、機材ごと大移動をします。撮影は場所に合わせて移動するため、各自で食事の用意ができません。そのためスタッフが準備しますが、日本ではお弁当が一般的です。いわゆるロケ弁です。

 一方アメリカの映画の撮影現場では、俳優やスタッフのための温かい食べものと、テーブルクロスの掛けられた食卓での食事が契約で保証されているそうです。

 是枝裕和監督がフランスで撮影した日仏合作映画『真実』(2019)のプロデューサーの福間美由紀さんがフランスで経験した映画の撮影現場では、シェフと契約をしてビュッフェのようなスタイルで、温かいものを好きなだけ食べられたそうです。

 必ず食事のために1時間休憩があり、誕生日の人がいると、バースデーケーキまで用意され、みんなでお祝いをしたのが思い出だとか……。まるで別天地です!

 日本でも冬の寒い時期にはスタッフが手作りの豚汁を出してくれることがありますが、お弁当以外のものを出すには、相当な準備と特別な予算が必要で苦労されている様子です。