AIが組織を丸ごと自動化するのはいつ?
AGIの実現に向けた5段階のロードマップ
では、AGIはいかにして達成されると考えられているのだろうか。OpenAI社は、表のような5段階を社内で共有しているという。これは、科学的な分類というよりは、まさに開発のためのロードマップと言えるだろう。
OpenAI社は現時点でレベル2までをほぼ達成し、レベル3に向けた取り組みを始めていると言える。レベル3のAIは、人間の代役ができるエージェントであり、人間に与えられたタスクの進行をモニタリングし、自らの思考にフィードバックをかけ、必要なら試行錯誤しながらゴールを達成できるし、数日間に渡って業務を執行し続けられる。これはA思考の自動化を達成するものだと言えるが、現代社会では多くの人々がA思考ができることをもって雇用されている事実を考えると、社会に破壊的なインパクトをもたらしかねない。
そしてレベル4になると、仕事のやり方を改善したり、新しい道具や製品を生み出したりできるようになる。いよいよX思考までもが自動化される。これは一見、達成が困難なようでいて、新しいアイデアであっても基本的には既存のアイデアの組み合わせなのだから、ランダムな創出をレベル3の機能で試行・評価することで、意外とあっさり力技で達成されてしまうのかもしれない。
レベル5を「組織」としている点は興味深いし、示唆に富む。たとえば、先に紹介したNobel Turing Challengeは「研究機関を丸ごと自動化する」試みだと考えられるからだ。また、レベル4の達成から組織全体の自動化までにはギャップがあるようにも見えるが、レベル4まででイノベーションが自動化されるのだから、自動化に関わるイノベーション自体が自動化され、革新的な変化が加速されるかもしれない。
それでは、AGIの厳密な定義には揺れがあるにせよ、それはいつごろ生まれると考えられているのだろうか。OpenAI社のCEOであるAltman氏は、2029年までにと考えているようだ。
Claudeを提供するAnthropic社のCEOであるAmodei氏は、早ければ2026年だと考えている。投資家たちに向けたポジショントークな面も否めないが、両社による開発がますます加速している現状を見れば、頷ける予想と言えるかもしれない。
2030〜2040年代、あるいはもっと遅いと考える研究者らもいるが、最も早い部類では、大きな困難に直面しなければ、おおむね今後3〜5年の間にレベル4〜5の AGIが誕生するという見方が妥当だろうか(組織の全機能を置き換える、真のレベル5の実現のためにはロボティクスのさらなる進化が必要となるので、もう少し先になるとしてもだ)。問題は、その先に何が起きるか、何を起こしていくかだろう。
さて、後編ではAGIが生まれた後、社会にどのようなインパクトがもたらされ、私たちはどう生きていけるのかを考えたい。
(早稲田大学ビジネススクール教授 斉藤賢爾)