実際、例えばOpenAI社が先月発表し、他の各社も同様の機能をリリースして鎬を削っている「詳細なリサーチ」(deep research)のように、時間をかけ、試行錯誤しながらウェブ上の情報を収集・分析し、レポートにまとめ上げるといったサービスを利用した経験がある読者は、AIには人間よりよほど「やり抜く力」があると感じているかもしれない。
SF作品『スタートレック』に見る
人間を超える知的能力を備える存在
ただし、人間の脳の作用の中でも「自我」の扱いについては注意が必要だ。ここで、AGIと自我の関係について、米国のSF作品『スタートレック』を例に考えてみよう。
世の中にいまだ存在しない科学技術が社会でどのように使われていくかを考えるには、プロトタイピングの意味でSFが役に立つ。この作品に登場する、何百人もの乗員を乗せて銀河系を冒険する巨大宇宙船「エンタープライズ号」を司る知能システムは、その名も「コンピューター」と呼ばれ、(米国の作品なので)英語で自然に対話でき、宇宙船の航行制御から乗員の食事の世話、レクリエーション、医療まで、あらゆる実務をこなす。
ただし、この「コンピューター」は自我を持たず、物語の中ではあくまで道具として描かれる(例えば、乗員が生き残るために必要であれば、宇宙船もろとも破棄される)。一方、同作に登場する「データ」という名のアンドロイドは自我をもち、人間を超える知的能力を備えるが、人間と変わらない仲間として描かれる(彼も乗員であるので、人間と一緒に生き残る道が模索される)。
後者のような存在はもちろん興味深いが、私たちは、まずは道具としてのAGIを欲するだろうから、前者の「コンピューター」をAGIのモデルとして考えていくのがよいだろう。