これからの日本は「自立精神旺盛で持続的な発展を続けられる国」を目指すべきだ─これは私の持論です。大筋で多くの方が賛同してくださるのではないでしょうか。しかし、その実現のためには国のグランドデザインも見直していく必要があるでしょう。
その際、国民一人一人の幸福度はとても重要な要素となります。そしてそのためには、たとえば一人当たりGDPを最大化していく必要があるでしょう。
明治以降のシステムの限界
日本は50年ごとに国を作り変える
おそらく明治以降作ってきた日本のシステムは限界にきているのではないか。そのように考えています。以前の著書でも書いたのですが、日本は明治維新以降、50年ごとに国を作り変えて成功してきた国です。明治維新からの50年で欧米列強からの独立を果たし、昭和初期からの50年は大戦、敗戦から占領を経て奇跡的な復興と高度成長を成し遂げました。
しかしこの高度成長があまりにもうまくいきすぎたので、そのあとシステムを見直すことを怠ってしまった。もういい加減、このシステムを見直し、新たなグランドデザインを考えなければなりません。
さきほど述べた東京の中間層の問題の他にも、「何かおかしいのでは」と感じられることは皆さんの身近なところにもあるはずです。

石破茂 著
子育てをしている方であれば、教育の格差が気になることでしょう。たとえばいつの間にか東大に入れるのはお金持ちの子弟が中心になってしまった。東大生の家庭の収入が平均よりも格段に高い、といったデータがあります。これが格差の再生産を生む可能性は極めて高い。おかしな話です。
また、日本の税金は決して高いほうではありません。北欧など高福祉国家に比べればはるかに安く、しかも高度な医療を格安で受けられる。治安の良さも折り紙付きです。
ところが日本の納税者の満足度は極めて低い。つまり「払っただけのことはある」と思っている方がとても少ない。
これもシステムに限界がきていることのあらわれだといえます。