豊かさの指標で
東京が最下位に
さらに資料では「基礎支出順位」も示しています。先の「平均的な世帯」における基礎支出(食料費や家賃、光熱費など)です。これが多いほど、生活にかかる基本的な出費が多いことになります。
こちらは当然、東京が1位で神奈川、埼玉、千葉、京都、大阪と大都市を抱える都府県が並びます。逆に一番出費が少ないのは大分で、次いで宮崎、沖縄、佐賀、鹿児島、長崎、高知と九州、四国が並びます。
中央世帯の「可処分所得」から、この「基礎支出」を引けば、食・住関連以外に出費できる金額が出ます。その順位を見ると、1位三重、2位富山、3位茨城……で、東京は42位になっています。
要するに可処分所得が12位であっても、出費が多いので、実際に使えるお金はかなり少なくなるわけです。ちなみに東京の下は大分、大阪、長崎、青森、沖縄となっています。
これだけでも東京の方にとっては気分が良くないかもしれませんが、さらに資料では参考値として、ここから「費用換算した通勤時間」を引いた順位も出しています。都道府県の平均的な通勤時間を算出して、それをお金に換算してみたうえで、所得からひいてみるのです。一般的な考えとして、通勤時間が長いことは自由に使える時間が短くなることにつながります。
こうして「可処分所得」から「基礎支出」を引き、さらに「通勤時間(の費用換算分)」を引くとどうなるか。
上位は三重、富山、山形、茨城、福井。東京はここでついに全国で最下位、47位となります。
もちろん、これは一つの統計にすぎません。しかし、東京こそが豊かであるという、これまでの前提を考え直すには重要な視点を提示しています。首都にはもっとも富と人材が集中する。そんな常識ももはや古くなってきているのかもしれません。
なぜこんなデータをご説明したかといえば、国のグランドデザインと直結すると考えるからです。
余談ながら興味深いのは、これを国土交通省の一つの部局が出しているという点です。国交省はかつて「国土庁」だった頃は、総理府の外局でした。そのため国家のグランドデザインを内閣総理大臣に出す立場にあったのです。だから今でもこうした資料を作っているのでしょう。
ともあれ、この統計を見れば東京に住んでいる人の幸福度が高いかは疑問に思われることでしょう。