「PDCAをすぐに持ち出す」とか「主語の大きい言葉を使う」といったこと以外にも、賢いビジネスパーソンであることをアピールする手法がコンサル業界にはたくさんあります。

 そして、冒頭のコピーが共感を集めているということは、おそらくコンサルが顧客企業の社員レベルでの反感を積み重ねてきたことの裏返しでもあるのでしょう。外資系コンサルティングファームで戦略コンサルタントとして働いた者として、自戒をこめてこの現象を分析してみたいと思います。

 さて、最初にとても野暮な話ではありますが、なぜ「PDCAとか すぐ言うやつの Pはだいたい つまらない。」のかを経営理論から説明させていただきます。ご存じの方も多いと思いますが、PDCAとはPlan(計画)→Do(実行)→Check(測定)→Action(改善)の一連のサイクルのことです。

 PDCAという手法が出現する以前の経営の世界では、Plan(計画)が一番重要だと考えられていました。それに対してPDCAが画期的だったのは、Action(改善)のほうがずっと重要なのだという目から鱗のような主張を提唱したことでした。

 この象徴がトヨタのカイゼンです。細かいカイゼンを年間に何万回も繰り返していくのです。それまでの「計画して実行して、100%達成しました」という経営と違って、足りなかったところに注目して、改善の繰り返すことは競争相手を追いつけないほど引き離すことにつながります。

 このコンセプトの出現で、ビジネス上の重要性がPからAへと移りました。その結果、当たり前のことなのですが「Pはだいたいつまらない」現象がまん延します。背景としてプロセスにおける力関係のシフトがあります。

 それまで会社の中で偉い人はPlanを担当していました。偉い人が計画を決めて、下っ端社員が実行する世界です。それがPDCA流行以降はCheckとActionが偉い人の役割となり、職場の力関係が変化しました。