ところが、このスキルがトンカチのように手に入ると、普通の人でも偉い人の覚えがめでたくなります。基本的に共感し、賞賛し、それでたまに小さなところで意見する。それもできるだけ重要性の低い話題で意見することが処世術としてはいいかもしれません。

 たとえば、「スマホのFaceIDは使ったほうがいいですよ」ぐらいの目上の人が怒らないレベルの意見を言うのです。

 こうして、スキルやフレームを活用することで、自分を「賢く見せる」ことができる人が職場で出世するようになると、会社が劣化します。深刻なレベルでの「だいたいつまらないPしか出てこない」という現象がおきるようになります。

 スキルやフレームといった定型的な思考を用いるメリットは、相手のコンセンサスを得やすくすることです。言い換えれば、自分がズレていないことが確認できるのです。一方で、会社の方向自体が時代とズレてきた場合には、フレームに頼った判断から出てくるアイデアは陳腐なものばかりになりがちです。

 その状況にフラストレーションをかかえる社員が一定数いて、日々上役のズレた賢さに対してもし恨みをつのらせているとしたら…、そこに冒頭のコピーが定期的にツイッター民の共感を集める理由があるのだとしたら…。心あるビジネスパーソンなら、そのような自社の現状を「変える必要」を感じるべきなのかもしれませんね。