「他人の顔色を気にしない方法があります」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

精神科医が教える「他人の顔色」を気にしない方法・ベスト3Photo: Adobe Stock

本音が言えない人

「自分の意見がない」「他人の顔色ばかり気にしてしまう」

 そんな自分自身への悩みを持っている人って思いのほか多いです。会議で意見を求められるとドキドキしたり、友人との食事で「どこでもいいよ」と本音を言えなかったり、誰かに決めてもらうのが楽だと感じてしまって、ついつい他人に流されることに慣れてしまう…。

 そんな「自分軸」の弱さに悩むひとが自分らしく生きるためのヒントについて、今日はお届けしたいと思います。

なぜ私たちは他者の意見に振り回されるのか

「この企画、どう思う?」と聞かれて即答できない。
「どこに食べに行く?」と尋ねられても「どこでもいいよ」と答えてしまう。そんな経験はありませんか?

 実はこれ、人間関係の中で自分の意見を抑え、相手に合わせる習慣が身についてしまっただけなのです。

 例えば「断ったら、余計にめんどうくさいな」と感じて流されてしまうことってありますよね?
 そんな断らない経験ってついつい習慣として染み付いちゃうものなんです。

 とくに日本社会では「和を乱さない」ことが美徳とされる空気から、自己主張は時に「わがまま」とみなされがち。

「気配り上手」「空気が読める」そんな評価を意識してしまって、さらに自己表現を抑制するようになります。

 その結果、自分の本音がわからなくなってしまうのです。

「自分がない」状態がもたらすストレス

 常に他者に合わせる生活は、脳に大きな負担をかけてしまうこともわかっています。

 神経科学の研究によれば、自分の本音を抑制し続けると、脳に過剰な負担がかかり、ストレスホルモンであるコルチゾールが過剰分泌されるとも言われます(註1)

 また、MRIを使った研究では、慢性的に自己抑制を行っている人の脳は、不安や抑うつに関連する扁桃体の活動が高まっていることも判明しています。

 自分の感情や欲求を無視し続けると、次第に「本当の自分」との接点を失ってしまい、慢性的な疲労感や無気力、さらには抑うつ状態を引き起こすことも。

 これは「自己喪失体験」とも呼ばれる状態で、社会的役割や期待から、女性や若い方でこの状態に陥りやすいことが報告されています。

「自分を取り戻す」ための3つのステップ

1. 小さな決断から始める
 それでは、「自分」ってどうやって取り戻していけばいいんでしょうか?
 まずは日常の小さな選択から自分で決める練習をしてみましょう。
「今日のランチは何にする?」「休日は何をする?」といった些細なことでも構いません。
 最初は違和感があるかもしれませんが、少しずつ「自分で決める(決断する)筋肉」を鍛えていきましょう。

2. 「わからない」を認める勇気を持つ
 即答できなくても大丈夫。
「少し考えさせてください」と時間をもらうことも自己表現の一つです。
 すべてに迅速かつ明確な意見を持つ必要はありません。
わからない」と正直に言える関係性こそ、健全な人間関係なんだと意識してみてください。

3. 「不快」のサインに敏感になる
 体はストレスに正直なものです。
 会話の中で体に違和感や不快感を感じたら、それはあなたの本音からのメッセージ。
 その感覚を大切にしましょう
「なんとなく嫌だな」という感覚だけでも良いですし、喉が詰まる、呼吸がしづらくなる、咳が出る、お腹が痛くなるといった心身に見られる不調も、自分を守るための重要なサインなんです。

自分らしさは練習で育つ

 自分軸が弱い人は「関係性」を重視するあまり、自己犠牲に陥りやすいという特性があります。

 ヒューストン大学のブレネー・ブラウン教授の著書『dare to lead』でも、健全な自己主張ができる人ほど、他者との真の関係性を築けることが強調されています。

 自分の意見を持ち、表現することは、一朝一夕に身につくスキルではありません
 時には周囲の反応に傷つくこともあるでしょう。

 しかし、少しずつ自分の声に耳を傾ける習慣をつけることで、あなたの中の「本当の自分」は必ず目を覚まします。

 他者との関係性を大切にしながらも、自分の気持ちに正直に生きる。そんなバランスを見つけることが、真の意味での「自分らしさ」につながるのです

 今日からほんの少しだけ、あなたの声に耳を傾けてみませんか?

(註1)Etkin, A., Büchel, C., & Gross, J. J. (2015). The neural bases of emotion regulation. Nature Reviews Neuroscience, 16(11), 693-700.

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。の著者・精神科医いっちー氏が書き下ろしたものです。)

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。