アイコンタクトは有効だが、ただやれば良いというものではない。話題の書籍『対話するプレゼン』の著者、岩下宏一は、「相手を見る意味を考えましょう」と言います。本記事では、プレゼンの場を「一方的に説明する場」から「対話の場」に変えることを提案した『対話するプレゼン』より、本文の一部を抜粋・加筆・再編集してお届けします。

プレゼンで、三流は資料ばかり見て、二流はアイコンタクトをする。では一流は?Photo: Adobe Stock

「見ているだけ」では意味がない

 対話するプレゼンでは、自分の都合で話を進めるのではなく、常に相手主体で進行することが重要です。

 話し手が一方的に話すのではなく、相手の理解や反応を確認しながら、相手と肩を並べて歩くように進めていきましょう。

(1)相手をよく観察する

 相手をよく観察し、様子を確認することは、相手の状態を把握するために非常に重要です。

 具体的には、次のような点に注意を払いましょう。

・話についてきているか
・疑問を持っていないか
・スライドや資料の該当箇所をちゃんと見ているか

 これらは、相手を観察していれば自然とわかるものです。

 対話するプレゼンのやり方に沿って空気作りができていれば、相手もリラックスしているため、何らかのサインを出してくれるでしょう。

 プレゼンで「用意してきたものをそのまま話すこと」だけに気をとられてしまうと、自分の注意が内向きになりがちです。

 その結果、相手が発しているサインに気づけなくなってしまいます。

相手の意識が話し手の話に向いている時のサインの例
・話し手を柔らかく見ている
・微笑を浮かべている
・うなずきやあいづちをする
・話し手が語尾でうなずくと同時にうなずく
・話し手が息継ぎをするのに合わせて相手も呼吸する
・資料の、いまの話題にリンクした箇所を見ている
・そこにメモを書き込んでいる

相手の意識が話し手の話に向いていない時のサインの例
・話し手ではなくよそを見ている
・動きや表情が固まっている(話し手に目が向いていても、その場合がある)
・資料をどんどん先にめくっていく
・資料の、いまの話題と関係ない箇所を見ている
・ほかのことをしている(スマホを見るなど)

 プレゼン中は、穴が開くほど相手を観察しましょう。

 下を向いて資料を読み上げることは避けるべきです。資料の上には誰もいません。

 相手の表情や反応に目を向けることで、プレゼンの進行が相手主体のものになります。

 もし、「相手の意識が話し手の話に向いていない時のサイン」を見つけた場合でも、慌てる必要はありません。

 その時は、ページや章の切り替わりまで様子を見守りましょう。その後で、次のように問いかけます。

「何かご不明な点はありませんか?」

 このひとことで、自然な形で相手の意識を引き戻すことができます。

 慌てずに、相手の状態を丁寧に観察しながらプレゼンを進めましょう。

「私はあなたに興味を持っています」というサインを送る効果も

(2)一人ひとりを均等に見る

 プレゼンを聞いている人全員を均等に見ることを心がけましょう。

 たとえば、会議室で3人を相手にプレゼンをしている場合、それぞれの顔に視線を向け、均等に目を配るよう意識します。

 プレゼン中は、無意識のうちに見る方向や視線を向ける相手が偏りがちです。

 しかし、これは聞き手にあまり良い印象を与えません。見る方向は、こんなふうに偏ってしまいます。

その場の上席者ばかり見てしまい、部下のほうはあまり見ない
 意思決定者を重視したいのはわかりますが、提案後の部下の「あの人、部長ばかり見ていましたね。なんだか、現金というか、仕事上も気配りに不安がありそうです」なんてひとことで失注するケースもあります。

熱心に聞いてくれている人ばかり見てしまい、ほかの人を見ない
 聞いてくれている人はそれでいいんです。むしろ、そうでない人にいかに聞いてもらうかが大事なのです。

 アイコンタクトが、プレゼンにおいて非常に重要なのは間違いありません。

 これは相手を観察するためだけでなく、「私はあなたに興味を持っています」というサインを送る効果もあります。

 意識してアイコンタクトをとりましょう。

 ただし、目を見続けるのが恥ずかしいと感じる場合は、無理をする必要はありません。

 相手の目そのものを見なくても、おでこや襟元に視線を向けることで、充分に相手に関心を示すことができますし、相手の様子を観察することも可能です。

 観察し、サインを見極め、反応する。

 その積み重ねが、プレゼンの場を対話の場へと変えていくのです。