グランクラスの“失敗”は
過剰サービス?宣伝不足?

 ところで、JR全体ではグリーン車より上級となる座席は、グランクラスだけではない。在来線を含めると、グリーン車以上の座席は例えば以下も存在する。

◆JR九州787系特急に設けられているDXグリーン車。かつての個室スペースを活かして3席のみ設けられ、最大141度まで傾くリクライニング性能が特徴。

◆JR東日本261系「サフィール踊り子」のプレミアムグリーン車。海側のみに2列のシートが並ぶ仕様。

◆JR西日本キハ189系「はなあかり」車両のスーペリアグリーン車。パーテーションで区切られた1人がけボックスシートが10区画設置されている。

 ただし、いずれも移動手段というよりは、列車に乗ることが目的の豪華列車ばかりだ。利用ニーズは圧倒的に観光が多く、ビジネスパーソンの利用が中心の新幹線とは全く異なる。

 出張用途の場合は移動の正確さと利便性(本数の多さなど)、仕事や休息のための快適さが求められる。新幹線はたとえ普通車でも飛行機や高速バスよりも座席は広く、その点は満足感を得やすい。

 一方で、観光列車とは違い、新幹線は飲食サービスを十分に楽しむには短すぎる乗車1~2時間程度のケースも多い。ゆえにグランクラスはサービス過剰と考える人も多いだろう。

 そもそも昨今はビジネスホテルの価格も高騰しており、出張経費の範囲では新幹線のグリーン車はおろか上級席を利用するなんて、難しい。グランクラスは国会議員でも別料金が必要な価格設定だ。

 また、PRにもいささか問題点がありそうだ。実はグランクラスの利用者は、東京駅の「ビューゴールドラウンジ」も使うことができる。電源やWi-Fiがあり、ソフトドリンクやお菓子が無料で提携されていて、さながら空港のカードラウンジのような場所だ。

ビューゴールドカードラウンジ東京駅「ビューゴールドラウンジ」HP

 しかし、この特典はあまり知られておらず、宣伝不足だろう。JR東日本が最近も力を入れてPRしている様子は、少なくともインターネット上では見つけられなかった。

 対して、JALやANAのラウンジサービスは、飲み物や軽食まで詳しく紹介している。JRは、せっかく設けた上級席の価値を思い切りアピールし、体験してもらおうという気概はないのだろうか?客単価を上げる、より上質なサービスを提供する目的に対して、継続的に取り組む意気込みが感じられないのは残念だ。