オリンピックや万博で
経済が潤うケースはほぼない
話が逸れてしまったので、元に戻そう。アベノミクス2本目の矢である。今の私の論調からすれば、財政出動は正しい政策にも思える。しかし、答えはノーだ。理由は、日本政府は多額の財政赤字を抱えているからだ。
自己資金で日本企業に投資した私とは、立場が異なる。財政赤字を抱えた状態で公共事業をやるなんて、もっての外としか言えない。付け加えれば、日本で東京オリンピックを開催したり、万博を大阪で開催したりするといった政策も私は理解できない。
オリンピックや万博が、経済を潤すために起爆剤となる、という考え自体が間違っているからだ。これも過去の歴史を調べてみるといい。オリンピックや万博を開催した国が、そのおかげで潤ったケースは、ほとんどないからだ。
もう1つ、本稿とは直接関係ないが、せっかくなので触れておく。3本目の矢「民間投資を喚起する成長戦略」である。ビジネスにおけるイノベーションを創造することで、新たな産業やそれに伴う雇用創出を実現し、結果として日本経済を立て直す、というものである。
こちらも大前提として、新しいビジネスの創造というのは、特に大企業であれば経営戦略として当たり前に取り組んでいるものであり、政府が堂々と宣言するものではない。加えて、日本企業の中で大小問わず、グローバルレベルのイノベーションを生み出している企業が、果たしてあるだろうか。私は、知らない。

アベノミクスの3本の矢、政策パッケージを評価すると同時に、アベノミクスと日銀との関係について考えてみよう。どちらの政策も、すべて1つの大きな絵の一部だと私は考えている。
日銀や政府における政策立案者たちは皆、自分たちがやっていることを理解していると信じ、互いにそれが正しい政策だと主張し合う。そして、周囲の人々もそのような主張に同意し、政策を実行に移す。
ただ、このような集団思考は日本に限ったことではない。集団思考は非常に一般的な現象だからだ。特に、簡単な解決策が提示されると、誰もが「そうだ、そのとおりだ」と言いがちである。
しかし、何度も言いたくはないが、バブル経済崩壊以降の日銀ならびに、政府、アベノミクス政策は、失敗だったと言わざるを得ない。