「子どもが感情的になり、言うことを聞かない」「他の子と比べて、うちの子が遅れていないか心配」「褒美を与えないと頑張れない子になりそうで不安」など、幼児の時と比べて、親の悩みが尽きません。小学校6年間は、良くも悪くも親の影響を受ける最も多感な時期。自分で考えて学ぶ子は、どのような生活環境にあるのか。「指導実績」×「心理学」×「ベネッセのデータ」でわかった最高の教育を「声かけ」というシンプルな方法でお伝えします。誰でも一度は感じたことのある子育ての悩みを、簡単に解決するには「声かけ」を変えることです。『自分で考えて学ぶ子に育つ声かけの正解』より、「ほめ方」「しかり方」よりももっと大事な「声かけ」で、「子育てあるある」に対応したノウハウをお伝えします。

「私が子どもの頃は……」と言う親が無自覚にやっているすぐやめるべきことPhoto: Adobe Stock

親のものさしで比べない

 どの親も、無意識のうちに我が子を誰かと比べています。近所の子やきょうだい、同じ年頃の自分などです。長いこと教育現場にいますが、「なんであなたはできないの!」「他の子たちはこれだけやっているんだよ。やりなさい!」と言う親は減ってきました。

 また、「うちの子はダメなんです」と謙遜でも言ってくる親も減りました。それはいいことだと感じています。一方で、「普通の生活をしてくれればいい」と言う親が多くなりました。

「東大に入ってほしいわけではないんです。普通に高校に行って、大学に行って、普通に結婚して幸せになってほしいんです。贅沢は望みません」

 普通の生活とは言うものの、「普通」という言葉が出てくるのは、比べているからです。

多くの子が塾に行くから行く
多くの子が習い事をしているからする

「とりあえずいろいろやらせておけば、どんな時代になっても対応できる」と、信じている親が多いです。

比べないことが大切

「先回りして勉強させておこう」「習い事に通わせよう」という親は、子どものために行なっています。正しいと信じて疑いません。しかし、その考えが、多くの子どもを苦しめているところを、私はたくさん見てきました。

「我が子を立派にしたい」「普通に幸せに生きてほしい」は、親のエゴでしかありません。子どもの前で自分がいい親だと思われたいという気持ちが少しでもあると、陥りがちです。ですから、「比べない」ことが大切です。比べることで、勝ち負けが生まれます。比べていいことはほとんどありません。
たとえば、字を書くのが得意でない子がいたとします。

「私が子どもの頃はもっと大変だったよ。頑張りなさい!」
 と昔の自分と我が子を比べて言った結果、子どもは書くことを嫌いになってしまいます。

「書く」行為は、自分の考えを伝える手段です。伝えることが楽しいと思えれば、文字を丁寧に書けるようになっていくのです。

「あなたは字をゆっくり書けていいね」
「あなたにはあなたの良さがあるから大丈夫」

 と声をかけることで、子どもは成長する過程を楽しむことができます。

 直してほしいところばかりに目が向いていると、子どもの可能性は狭まります。親のものさしによる比較から解放された子どもは、自分のペースで成長します。今、この瞬間から、我が子のありのままを見つめ、比べないことの大切さを意識していきましょう。

(本原稿は、『自分で考えて学ぶ子に育つ声かけの正解』より一部抜粋、再編集したものです)