
国民民主党の支持率急伸や財務省解体デモ
異例の税制改正プロセスの帰結
「103万円の壁」撤廃問題は、所得税の課税最低ラインを年収に応じて調整し160万円に引き上げる自民・公明与党の税制改正案が衆院で可決され、参院での審議を経て成立する見通しだ。
昨秋の総選挙で手取り収入を増やす政策として国民民主党が公約に掲げたものだが、少数与党体制の下、昨年末の税制改正以来、与野党政策協議が続けられるなかで、最大の関心を集める経済政策上のトピックになった。
話題の「財務省解体デモ」は、この「103万円の壁」問題がきっかけに拡大したという。
最終的には、課税最低限の引き上げは国民民主党が当初、求めた178万円には届かなかったが、国民民主党の政党支持率は、各種世論調査で上昇し、特に若年層で自民党の支持率を上回る勢いだ。
「手取りを増やす」という同党のスローガンが、現役層に支持された結果だろう。
だが壁引き上げの議論には誤解もあった。所得税の課税最低限を超えると、課税が発生し手取りが減るので「働き控え」が起きるとされたが、すでに2018年の税制改正で働く時間を増やしても、税は取られるものの、それでも手取り所得が増えるように制度は改善されている。
それでもこれほど年収の壁の議論が広く盛り上がったのは、日本の財政システムが大きな課題を抱えていることが背景にある。