破談自体は両社の経営判断の結果ですが、前提だったことは今のモビリティ業界のイノベーションについてはホンダにしても日産にしても単独では乗り越えることができないという認識が、経営統合の議論を始めたときの前提でした。統合を諦めたことで両社はモビリティの進化から一歩、後退したことは間違いありません。

 おそらくこの状況から新4強に追いついていけるのは世界でもトヨタ、VW、GM、ヒョンデなど5社程度です。しかしそれも前提としては「今の競争が続くと仮定した場合」ということになります。実は新4強の進化については、さらなる悪夢のようなシナリオが起きうるのです。

中国の自動車メーカーBYDのSEAL Photo:PIXTABYDが製造・販売するEV「シール」 Photo:PIXTA

 それは新4強同士の経営統合です。ホンダ日産ではなく仮に、BYD百度が誕生したらどうでしょうか。すでに完成度が高い百度の自動運転技術をBYD全車両にダウンロードする未来がやってくる可能性があります。それもEVだけでなくプラグインハイブリッド車を含めてすべての車種にダウンロードされる未来がくるとしたら。

 この前提はテスラウェイモが誕生してもおなじです。いまのところテスラは共和党、グーグルは民主党寄りで水と油のような存在です。イーロン・マスクがぶちあげたロボタクシーの2026年の販売が本当に可能かどうか、GAFAMをはじめとするシリコンバレーのIT企業はお手並み拝見とばかりにその動きを注視している状況です。

 しかし仮に中国政府がBYDと百度の統合という荒業を使う事態が起きたら西側陣営として悠長なことは言ってはいられなくなります。西側陣営でもそれに匹敵する新たな座組を考えるとしたら対抗できるのはテスラウェイモと言う座組しか可能性としてはないでしょう。