この「30分充電に時間がかかる」というのがEV普及のそもそものボトルネックだったのですが、仮にBYDでは5分で400kmの充電が可能になるとすれば、これはモビリティ業界にイノベーションを起こします。

 これは実はBYDが長年目指してきた世界観の実現でもあります。ガソリンの給油と電気の充電を同じ手軽さで実現するということがそもそものBYDの持つビジョンだったのです。

 一方でこれは推測ですが、5分で400km分の電気を充電するには高電圧の設備が必要です。その危険度を考えると中国以外の国でこのシステムがすぐに使えるようになるかどうかは疑問ではあります。

 さて、とはいえBYDがなぜその高速充電の実現にここまで近づけたのかというと、もともとはBYDが電池メーカーを発祥とするところが大きいと思います。祖業が電池であることから充電領域でのイノベーションを世界でも一番引き起こしやすいだけの土台を持っているのです。

 さて、そのBYDの発展でこれからの世界のモビリティ産業はどう変わっていくのでしょうか。私は未来予測専門の経済評論家の立場で、世界のモビリティ産業を率いるのは新4強と呼ぶべき企業群に絞られたと考えています。

 その新4強とはBYDとテスラ、そしてグーグルの子会社であるウェイモと中国のIT企業である百度です。このうちBYDとテスラは新エネルギー自動車の生産台数とSDV技術でモビリティ業界のイノベーションをけん引しています。一方でウェイモと百度は完全自動運転技術で世界の最先端を走っています。

 具体的にはウェイモと百度の両社はすでに複数の都市でロボタクシーの営業運転を始めているのです。世界中の既存の自動車メーカーよりも先に、レベル4の自動運転車を実現したのです。

 では既存の自動車メーカーはこれらの新4強に離されていくばかりなのでしょうか。状況は一年前と比較して悪化していることは事実です。最近のニュースではホンダと日産の経営統合が破談になったことが話題になりました。