
生産性が低いから賃上げができない。人口減少で個人消費が増えないから、国内の売上高が伸びない。成長戦略にはイノベーションが不可欠──。大企業経営者などの経済エリートが信じてきたビジネスの定説は、実は誤解だらけだったのかもしれない。特集『大企業が賃金を収奪!「階級社会」の不幸』の#8では、気鋭のトップエコノミスト、BNPパリバ証券の河野龍太郎経済調査本部長に、日本の長期停滞を招いた「本当の理由」について解説してもらった。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)
日本の労働生産性が上がっても
賃金が上がらない「本当の理由」
──河野さんが執筆された新著『日本経済の死角──収奪的システムを解き明かす』(筑摩書房)が産業界で話題になっています。収奪的というタイトルがなかなか刺激的なのですが、日本の労働者が収奪される側に回っていたということでしょうか。
かねて日本の長期停滞の元凶は、もうかってもため込み、賃上げも国内投資も消極的な大企業にあると論じてきました。