「自分の人生に納得がいかない人に、精神科医が教える考え方があります」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「こんなはずじゃなかった…」自分の人生に納得がいかない人に、精神科医が教える考え方とは?Photo: Adobe Stock

理想と現実のギャップ

「こんなはずじゃなかった」

 この言葉を心の中でつぶやいたことはありませんか?

 キャリア、人間関係、自己実現など、様々な面で理想と現実のギャップに苦しむ方は少なくありません

 そんな人生のなかの「納得いかない」に私たちの心はどのように向き合えばよいのでしょうか?
 そんな感情が起こったときに知ってほしいことを共有させていただきますね。

なぜ「納得がいかない」と感じるのか

 人生の納得感のいかなさは、多くの場合、自分自身が描いた「理想像」と「現実」とのギャップによって生まれます。

 学生時代に思い描いたキャリアパス、理想の家庭像、自分の能力への期待など、私たちの誰もが無意識のうちに「こうあるべき」という内的な基準をじつは持っていて、それが現実に追いついていないとき、自分の人生に対する失望感、「納得いかない」が生まれるのです。

 さらに、そんな「納得いかない」は、他者との比較によってどんどん巨大化してしまいます

 とくに昨今はネットやSNSの普及によって、絶えず他者の「ハイライト」を目にしてしまう環境があるせいで、他人の成功や幸せそうな瞬間と、自分の日常とをいやでも比較してしまい、そんな「納得いかない」はどんどんとチリ積もってしまうのです。

心の整理の第一歩:「納得いかない」を認める

 まず大切なのは、そんな「納得いかない」という感情自体の否定をしないことです。

「納得がいかない」という感情もまた、あなたが生み出した感情です。
 あなたの価値観や希望を反映したいわば分身のようなものなのです

 その感情をただ抑圧すると自分自身の否定につながり、余計に悪くしてしまいます。
 だからこそ、ただ否定するのではなく、「今、私はこう感じている」と静かに、客観的に認めてみましょう。

 感情を否定せずにクリアに受け入れることが、心の平穏のための第一歩なんです。

再評価:「あなたの」本当に大切なものは何か

 人生に納得がいかないと感じるとき、私たちは無意識のうちに「社会的な成功」の基準に縛られてしまっています。

 そんなときこそ、いったん立ち止まって「私にとって本当に価値のあるものは何か」を問い直すことが大切です。

 例えば、キャリアで思うような成果が出ていないとき、「どうして自分はキャリアを求めているのか?」と掘り下げてみてください。

 社会的な評価が欲しいのか、経済的安定が欲しいのか、それとも自己実現のためなのか…。

 そんな答えがないまま働き続けることは、余計に人生の無意味さ、達成感の薄さを助長させてしまいます

 また、あなたの本当の目的、大切なものを意識できるようになると成功のために別のアプローチも見えてくるかもしれません。

 それくらい、自分の価値基準を把握しておくことは大切なことなのです。

自分史の書き換え:解釈を変えてみる

 私たちは自分の人生を「物語」として理解しています。

 納得がいかない感覚は、しばしばその物語の解釈の違いや否定から生まれてしまうものです。
「失敗した」「遅れをとった」という解釈を、「経験を積んだ」「違う道を選んだ」と書き換えてみましょう。

 これは単なるポジティブシンキングではなく、出来事そのものではなく、その意味づけを変えるプロセスになります。

 抑揚のないただの単調な映画をつまらないと感じるように、もしかしたらそんな挫折の経験も、あなたという「物語」をより良いものにするための教訓や、出会いのために必要なことだったのかもしれません。

 そんな解釈について書き換えるためには、前述したあなただけが持つ「価値観」を持って見直すことが重要なのです。

 あなたが失敗だと思って選択してきたこと、それもあなたの本当に大切なことに挑むためには必要なプロセスだったのかもしれない。

 人間の過去は変えられなくても、その解釈は変えられるのです。

完璧な人生とは?

 誰もが完璧な人生を送れるわけではありません。
 むしろ、挫折や迷いがまったくない、抑揚のない人生を送ってしまい「つまらなかった」と達成感や無力感を感じている人も大勢います。

 ですが、失敗や挫折を経験しながらも、自分らしく生きていく人生を見つめ直していくことこそが、本当の意味での「納得のいく人生」になるのかもしれません

 今日から、少しずつでも自分の内面と向き合い、自分だけの「納得」を見つけていきましょう。
 その過程自体が、かけがえのない人生の一部となるはずです。

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。の著者・精神科医いっちー氏が書き下ろしたものです。)

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。