これらの推計を基に考えると、行政サービスにおける需要と供給のバランスはどんどん崩れていくことになる。需要は行政サービスの利用者のこと。今以上に高齢化率が高まり、かつ高齢者の絶対数が増えていけば介護・医療費は増大し、行政サービス自体を維持することが難しくなる。
セーフティーネットの希薄化で行政への依存度はさらに高まり、また高齢者に限らず理不尽なカスハラも増えていくだろう。自治体によっては、職員の名札から顔写真・所属・フルネームを外し、ひらがなの名字だけにするところも出てきた。利用者が写真を撮影してSNSに無断投稿したり、職員の個人情報をネットで検索したりする悪質な行為から職員を守るためだ。利用者と向き合う職員は、それだけ緊張感を持って業務に当たっているということが分かる。
働き手が減り続ける中
行政の生産性向上が急務に
一方、需要に対する供給はどうか。日本全体として生産年齢人口=働き手が減少していくわけだが、地方はもっと厳しい状況になっていくだろう。当然、地方公務員だけが例外になるはずがなく、多くの自治体で職員数の減少に直面することになる。既に地方公務員試験の受験者数は年々減り続けており、既存の職員においても長期病休者が増加傾向にある。自治体職員が今後増えていくような要素は、残念ながら現時点では見当たらない。
「増え続けていく需要」に対して「減り続けていく供給」。このアンバランスを均衡させるには、1人あたりの生産性を上げる必要がある。具体的には、現在の業務や人員配置を見直す、手続き処理の業務を丸ごと外部に委託する(BPO=ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、AI・ロボティクス導入でデジタル化・システム標準化を進める等々、様々な施策を早急に実行していかなければならない。なんとなく意識しているだけでは意味がない。もはや待ったなしの現状を理解してほしい。
自治体の業務量は激増し
小手先の対症療法は無意味に
少子化が年々進行する日本では、特にこの10~20年間は優秀な人材の奪い合いになる。だから、人を増やそうと発想したところで、そう簡単には地方自治体には来てくれない。賃金を各自治体が独自に上げることはできないので、報酬面で優位性を出すこともできない。増え続ける行政の業務を増員で対応できなくなっていることから、「人を増やせないこと」「今より減ること」を前提に、様々な改革に知恵を絞っていかなければならない。「業務量が増えたら人を増やせばいい」という考えは即刻捨てるべきである。