自治体の業務量が増えてきていることはどの自治体でも職員自身が実感しているし、それはある程度避けられないものだということも理解している。では、外注すれば解決するのかといえば、もちろんそんな単純な話ではない。もっと手前にある「業務量が増えていることの本質や根本原因」をきちんと見極める必要がある。ただ、この見極め作業は当事者である職員たちではなかなかできない。今の業務を抽象化する術がなく、かつ長年の習慣や前提として受け入れてしまっているからだ。

「なぜこの業務をしているのか」「なぜこのやり方をしているのか」と問われても、「前任者から引き継いだから」となってしまって現状に対して疑うことをしない。こうした認識では「業務量が増えたから外注すればいい」という発想にしかならない。

 今の業務プロセスの川上まで戻り、「この業務は本当に職員がやらなければいけないものか」「他の自治体と一緒にできないか」といった分析をして初めて、「違うやり方にしよう」「デジタルに置き換える」「民間企業やNPO法人など外部に委託する」「地域に任せる」「この業務をやめる」といった仕分けをすることができる。表層だけを見て小手先の対症療法をするのでは意味がない。原点まで遡って、現状に至った要因がどこにあるのかを突き止めるべきである。

社会保障給付費の膨張で
若者の未来に影が射す

 少子高齢化に伴う社会保障給付費の膨張は大きな社会問題であり、今の日本の1丁目1番地の課題と言える。既に一般会計予算の3分の1を占める社会保障給付費は経常的なコストであり、何があろうと毎年負担しなければならない。

 つまり、このコストが重くなると新しい取り組みへの投資を妨げてしまう。これは企業において、新規事業へのチャレンジや研究開発などゴーイングコンサーン(編集部注/going concern 会社等が将来にわたって事業継続していくとの前提のこと)のために必須な取り組みを妨げることと同義である。国における新規領域とは何か。それは新しい産業の芽を育てることなどだけではない。これからの社会の根幹を担う若い人材が未来に希望を持ち、生き生きと働き社会に貢献できる社会づくりが最も大切な投資である。