配球は走者の有無によっても変わる。走者がいない場合、バッテリーは、たとえば緩急のゆさぶりに弱い打者に対して、カーブなど遅い変化球を織り交ぜる。
しかし走者一塁の場合、バッテリーは、足の速い走者であれば、盗塁させないように配球を変える。つまり、カーブのような遅い球を少なくする。なおかつ捕手が二塁にスローイングしやすいようにアウトコースを多くする。
こうした配球の傾向がわかれば、打者は狙い球を絞りやすくなるわけだ。
もちろん、打者には苦手なコースや球種、得意なコースや球種があるから、それに応じてバッテリーの配球は変わってくる。打者は当然、それも加味して配球を読む。
試合前のミーティングで
話していること
試合前には必ず先発投手、捕手、コーチ、スコアラーが集まってバッテリー・ミーティングを行う。そのときにスコアラーは、打者のデータに基づいて「このコースや球種だったらカウントが取れる」といった話をする。ただし、カウントが取れるというデータがあっても、シチュエーションや投手の調子によっては、そのコースや球種を投げられない場合もある。
私は現役時代、福岡ダイエーホークスに移籍してからは、あらかじめ対戦相手の試合の映像などを見て、自分なりに打者のデータを取って分析していた。だからスコアラーの話は、あくまでも「プラスアルファ」として取り入れていた。
そして、バッテリー・ミーティングが終わると、トイレの個室に30分くらいこもって、その日対戦する先発の打者9人をどう抑えるか、1回から9回までシミュレーションをしていた。ちなみに、その時間は肘の痛みを抑える痛み止めの座薬を入れる時間でもあった。私は現役時代のうちの20年以上、痛み止めを使い続けた。
プラスアルファとして特に役に立ったのは「打線のつながり」に関する話だった。たとえば「下位打者が出塁して1番に回ると得点するケースが多い」というデータがあると、いつもはあまり警戒しない下位打線に対して集中して投げられるようになる。