「困ったらアウトロー」は昔話
投手対打者の勝負は「読み合い」

 投手対打者は基本的に「次はこういう球を狙って打ちにくるだろう」「次はこういう球を投げてくるだろう」という「読み合い」の勝負だ。ただし、シチュエーションによってさまざまな「思惑」があり、そこに「偶然」が交錯するのだ。

 投手の投球術について、昔はプロ野球でも「困ったらアウトロー」と言われた。アウトコース低めに投げる主な理由は、長打になる確率が低いからで、実際、アウトコースを流し打ちして、いわゆる逆方向のスタンドに入るホームランが少なかった印象がある。

 しかし今は、逆方向の飛球がホームランになりにくいという時代ではない。ドーム球場は打球がよく飛ぶし、ホームランが出やすいように「ラッキーゾーン(楽天モバイルパーク宮城のEウィング、みずほPayPayドーム福岡のホームランテラス、ZOZOマリンスタジアムのホームランラグーン)」を設けている球場もある。そのおかげで逆方向へのホームランは珍しくなくなった。

 また、「困ったらアウトロー」の理由には、アウトコース低めが得意な打者は圧倒的に少ないということもある。ただし、プロ野球の打者なら、アウトコース低めがくるとわかっていれば、そこにタイミングを合わせて打つ技術は持っている。

 だから今は昔ほど「困ったらアウトロー」と言われなくなった。それよりも「いろいろな変化球を駆使してゴロを打たせる」というのが基本的な投球術になっている。

配球の傾向がわかれば
打者は狙い球を絞りやすくなる

 投手の球種別の投球割合のデータに関して言うと、打者にとって大事なのは「どのカウントでどのボールが多いのか」という配球の傾向を表すデータで、走者がいない場合と走者がいる場合の両方が必要になる。

 基本的に配球の傾向はカウント別で最も出やすい。「この投手は、このカウントだとこの球が多い」というデータは、打者の読みに使われる。もちろん、カウント別の投球データは打者だけではなく、たとえば「このカウントだからエンドランにしよう」「このカウントなら単独スチールがいいだろう」「このカウントは普通に打たせよう」といった、チーム戦術における監督やコーチの判断にも活用される。