睡眠はすべての動物にあります。最近では、クラゲでも眠ることが発表されました。動物により睡眠の長さはさまざまです。一般的にコウモリやネズミなど運動量が多く、体重あたりの消費カロリー数が大きい動物種ほど睡眠時間が長い傾向があります。

 睡眠の「質」といわれますが、まずは「量」の確保が大切です。睡眠は4段階あり、まず脳波の活動が遅くなり、ノンレム睡眠と呼ばれる睡眠に入ります。N1、N2と睡眠が深くなり、N3で最も深くなった後、脳波が活発になるレム睡眠に入ります(筋肉の収縮は最低になり、この時目覚めるといわゆる金縛りを体験します)。これで1セット、1時間半ぐらいの長さです。

 わたしは夜間に目が覚めることがありますが、覚める間隔は1時間半あるいはその倍数であることが確かに多いです。「量」が担保されないと、この1セットの睡眠の「質」が保たれません。

 睡眠は日中の疲労蓄積により夜間に向け強くなる「睡眠欲求」と、体内時計によりプログラムされた朝方に強くなる「覚醒力」のバランスで形作られると考えられます。入眠には、体温の低下が重要です。この時、脳の温度も下がっています。また夜のホルモン、メラトニンの分泌が多くなることも大切です。

 メラトニンは薄明かりの状態でもその分泌が減るので、熟睡のためには、部屋を真っ暗にして眠ることが大切です。朝方には副腎から分泌されるコルチゾール(ストレスの時に分泌されるホルモン)が上昇し、交感神経が高まり、覚醒に向かいます。この活性が強い人では先ほど述べたモーニングサージが起こりやすく、また糖尿病の人では朝起きて空腹でも血糖が高い状況が起こります。

 睡眠のメカニズムは、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の機構長、柳沢正史により解明されつつあります。睡眠に誘う原動力は神経が興奮を伝えるタンパク質の活性状態にあることが次第にわかってきました。

 寝ている間も脳は休止しているのではなく、老廃物の排泄、記憶の整理など重要な仕事をしています。睡眠を甘く見てはいけません。