高齢者が昼寝を好むのは
老化負債の現れ
睡眠負債を抱えると、食欲を抑制するレプチンというホルモンの分泌が減少し、逆に食欲を増すホルモンであるグレリンの分泌が増えて、夜間に食欲が亢進し、肥満につながります。高血圧、糖尿病などの原因となり、また認知症、うつ病、免疫力の低下も起こします。ついついの夜更かしの結果、「睡眠負債」は大きな負債につながります。
不眠症を訴える人は成人の30?40%もいます。しかしながらその中で厳密に不眠症の診断に至る人は10%程度で、薬を必要とする方は約7%です。
老化してくると、夜と昼のリズム、メリハリがなくなり、夜の睡眠が分断されたり浅くなったりします。逆に昼にウトウトするようになります。柳沢が発見したオレキシンは、われわれを覚醒させるホルモンですが、高齢者では夜にその活性が高まってしまいます。
一方、昼にはオレキシンの活性が落ちて、眠くなるのです。昼寝は、夜寝られないため、その不足分を補うためのものだと考えられてきましたが、高齢者の場合は「昼起きていることができない」のです。昼寝をしたくなるのも老化負債の現れです。

伊藤 裕 著
年齢を重ねると代謝が低下して、若い時ほど睡眠の量は必要ではなくなります。夜眠れなくても焦らず、それでいいのだと思うことが大切です。そうしてリラックスすることで睡眠が誘導されます。寝れない、寝れないと焦ると余計に「睡眠負債」が増えていきます。
また、最近は覚醒を保つホルモンであるオレキシンの作用をブロックする睡眠導入剤が使用できるようになりました。副作用も少ないので、これまでの睡眠剤のイメージから脱して、安心してこの薬剤を利用して眠ることもお勧めです。
こうして少しずつ老化負債が嵩むことで、メタボリックドミノに示したさまざまな病気が起こってきます。ですから、これらの病気は、「負債病」といえます。