一日に摂るべき
食物繊維の量は?

 このように、高たんぱくな食事をするならば、バランスよく食物繊維も食べた方がいいと青江氏は話す。それでは、たんぱく質に対して、食物繊維はどのくらい食べればいいのだろうか。

「たんぱく質と食物繊維の比率は3対1くらいがいいです。例えば、たんぱく質60gを摂っている人であれば、食物繊維は20gが必要ということです。意外に少ないと思われるかもしれませんが、日本人の食物繊維の摂取量は1日平均15gほどしかありません。野菜を意識的に摂る人も多いかもしれませんが、葉物野菜はほとんど水分のため、それほど食物繊維が入っていません」

 食物繊維が豊富なのは、じゃがいも、ごぼう、長芋などの根菜類、納豆、豆腐などの豆類、そしてわかめやひじきなどの海藻類である。他にも蕎麦は食物繊維が豊富である。

 ただ、青江氏は「一番簡単なのは主食を工夫すること」だと言う。

「まずはご飯などの主食を抜かないことです。米、穀物、シリアル、もち麦、ライ麦パンなど主食は手軽に食べられますし、食物繊維も豊富です。お肉が好きな人は、主食をあまり摂らずに肉をメインで食べる人も多いですが、あまりおすすめしません。蕎麦を毎日食べたり、ひじきの煮物を毎日作ったりするのは現実的ではありませんので、毎日の白米にもち麦などの雑穀を混ぜれば、無理せず食物繊維が摂れます。会社での昼食も、もち麦や雑穀のおにぎりをコンビニで買うのがおすすめですね」

腸内環境を整えるのに最適なのは
穀物を中心とした日本食

 現在では、こうした腸内細菌に関する研究が進み、いわゆる腸活をしている人も多くなってきた。青江氏も腸内環境の重要さをこう語る。

「腸内細菌は人によって異なります。フィーカリバクテリウムやビフィズス菌、プレボテラ菌がいい菌で、これらがちゃんと腸内にいると病気が少ないという研究があります。一方、それらが少なくてルミノコッカス菌などが多いと病気になりやすいとわかっています。また、腸内環境が悪く、食物繊維などのエサがないと、細菌は腸の粘膜を食べてしまいます。これはリーキーガットとも呼ばれており、要するに腸がスカスカの状態です。これでは腸のバリア機能が働かず、アレルギーや感染症の原因となる可能性もあります。さらに、腸内環境は病気だけではなく、メンタル状態などにも影響を与えると言われています」

 青江氏によると、もともとの腸内環境は母親から受け継がれるが、本人の長年の食事によって腸内での「細菌の勢力図」が変わっていくそう。食物繊維などをしっかり摂取することで、いい腸内環境を作ることは可能なのだ。

「日本人にとって、腸内環境を整えるのに最適なのは穀物を中心とした日本食です。我々は日本食によって作られた腸内環境を何世代にもわたって受け継いできたからです。欧米型の食事だと食物繊維が少なくなりがちです。そうした場合は、1日のどこかで食物繊維を意識的に摂取するようにしましょう」

 日本人の食生活はどんどん欧米化しており、若い世代では日本食を食べる習慣が少なくなっている。そんな現状を青江氏は危惧する。

「若い世代では、一人暮らしの部屋に炊飯器がないという人もいて、玄米やもち麦はもちろん、白米も食べない子が少なくありません。そうなると彼らや、さらにその子ども世代の腸内環境は、徐々に悪くなっていくかもしれないですね」

 健康のために筋肉をつけても腸内はボロボロ。こんな残念な結果にならないよう、食物繊維もしっかり食べ、体の内外から健康になっていこう。