それとともに、備蓄を強化して、例えば、食糧不足だけでなく価格調整用にもいつでも使うことを検討すべきだろう。また、国民も米価が高騰したら一時的に輸入米、麺類、パンなどにシフトして自衛し、政府も国産米の消費量の増減についての呼びかけや、給食での使用を増減させることも必要だろう。
ともかく、かつての食糧管理制度も現在の輸入制限も、世界的な市況と関係なく、かかったコストを価格に上乗せできることが問題だ。このために、国際競争力を高める合理化が進まない。
先進国の農業にコストがかかるのは普通だが、価格が数倍から10倍というのはあり得ない。自然条件が日本より悪く、いまや日本より賃金も1人当たりGDP(国内総生産)も高くなった韓国の消費者米価ですら、日本の4割くらいなのである。
では、どうするべきだったかといえば、ミニマムアクセスと高関税という仕組みで守られているあいだに、農業改革を行って、せめて韓国と同じようなコストで生産できるようにし、例えば、数十%の関税だけで保護するのが王道だ。
その努力をしないから、トランプ大統領から、いつまで異常な政策をやっているつもりかと攻撃されることになったのだ。
今回の米不足は減反政策が原因だと勘違いする向きもあるが、平時には米余りであるから、将来の米輸入の増加に備えるためにも、米以外への転換はやはり推進すべきだ。
自動車産業を売って
米を買った日本政府
現在、米の生産コストが高いのは、農業生産や農地取得で株式会社化が制限されており、主たる収入を他に持つ兼業農家が、省力化のために高い機械や農薬を農協から買い、販売も農協を通じ、預金や買い物も農協を通すような状態だからだ。
常識的に考えれば、株式会社の参入も含めて農業生産の大規模化・省力化で平野部でのコストを下げるべきだろう。現在の農家の平均耕地面積は1.8ヘクタールだが、秋田県の大潟村では八郎潟を干拓して入植した時から15ヘクタールであるし、1軒の農家でおそらく20~50ヘクタールくらいは耕せるのではないか。